明石の漁港から食卓へ!鯛が水揚げされてから届くまでの流れ
こんにちは、明石めで鯛やの女将です🐟
スーパーや通販で買うお魚。それがどういう道のりを経て、食卓に届いているかをご存じでしょうか。
海から上がって、セリにかけられて、運ばれて、加工されて、箱に詰められて——間には驚くほどたくさんの手が入っております。そしてどの段階で手を抜いても、味は落ちてしまうのです。
明石には「昼セリ」と「活け越し」という、全国的にも珍しい仕組みがございます。これが明石の魚のブランドを支えてまいりました。
この記事では、魚が海から食卓に届くまでの流れを、順を追ってご説明いたします。最後に、当店が通販でどうお届けしているかも、正直にお話しいたします😊
1. 魚が食卓に届くまでの、全体の流れ
まずは全体像をご覧くださいませ。
| 段階 | 行われること |
|---|---|
| ① 出漁 | 漁師が海へ出て、魚を獲る |
| ② 水揚げ | 港へ戻り、魚を陸に上げる |
| ③ 選別 | 魚種・大きさごとに分ける |
| ④ セリ | 仲買人が値をつけて買い付ける |
| ⑤ 活け越し | (明石の特徴)生簀で魚を休ませる |
| ⑥ 出荷 | 市場や業者へ運ばれる |
| ⑦ 加工 | さばく、下処理する、調理する |
| ⑧ 包装・冷凍 | 商品の形にする |
| ⑨ 配送 | ご家庭へお届け |
| ⑩ 食卓へ | 召し上がっていただく |
十の段階がございます。そして、どこか一つでも手を抜けば、味は確実に落ちます。
よい魚が食卓に届くというのは、実はたいへんなことなのでございます🐟
2. 明石の漁師の一日
明石の漁は、早朝から始まります。
おおよその一日(漁法や季節によって異なります)
- 未明〜早朝 出漁。まだ暗いうちに港を出ます
- 早朝〜午前中 漁。潮の流れを読みながら
- 午前中 帰港、水揚げ
- 水揚げ後すぐ 選別。魚種と大きさごとに分けます
- 昼 セリ
- 午後 出荷、網の手入れ、翌日の準備
明石の漁場は、港からごく近いのが特徴でございます。
遠洋漁業のように何日もかけて出かけるのではなく、朝出て、昼には戻る。これが明石の鮮度を支えている、いちばん大きな理由かもしれません。
そして明石海峡の潮は、一日に四回変わります。漁師さんはその潮を読んで漁をいたします。どの時間に、どこへ行けば魚がいるか——これは長年の経験でしか身につかないものでございます😊
3. 明石の漁法|どうやって獲るのか
明石では、さまざまな漁法が用いられております。
主な漁法
- 底びき網漁 海底近くを網で引きます。鯛やヒラメ、エビなどが獲れます
- 船びき網漁 二艘の船で網を引く漁。イカナゴ漁などに
- 一本釣り 釣り針で一尾ずつ。魚に傷がつきにくく、鮮度が保てます
- たこつぼ漁 明石だこの伝統的な漁法。つぼを沈めておき、入ったたこを獲ります
- 定置網漁 網を設置しておき、回遊してきた魚を獲ります
- のり養殖 冬の明石の大事な産業でございます
漁法によって、魚の状態が変わります。
たとえば一本釣りは、一尾ずつ丁寧に釣り上げますので、網で獲るよりも魚が傷つきません。そのぶん手間と時間がかかりますが、品質は上でございます。
お店で「一本釣り」と書いてあるのは、そういう意味なのですね🐟
4.「昼セリ」という、明石の仕組み
ここからが、明石の特徴でございます。
一般に、魚のセリは早朝に行われます。築地や豊洲の競りの様子を、テレビでご覧になったことがあるかもしれません。
ところが明石には、昼にセリを行うという独特の仕組みがございます。
なぜ昼セリなのか
- 漁場が港からごく近い 朝に漁をして、昼には水揚げできるからです
- その日に獲れた魚を、その日のうちにセリにかけられる 前日の魚ではありません
- 活きたままセリにかけられる これが大きい。死んだ魚ではなく、生きている魚を競るのです
- 午後に出荷すれば、夕方には店に並ぶ 関西圏なら、その日の夕食に間に合います
朝獲れた魚が、昼にセリにかけられ、夕方には食卓へ。
これが明石の鮮度の正体でございます。設備や技術の話ではなく、仕組みそのものが鮮度を生んでいるのですね。
漁場が近いという地の利を、最大限に生かした仕組み。先人の知恵だと思います😊
5.「活け越し」という技|魚を休ませる
そしてもうひとつ、明石を語るうえで外せないのが「活け越し(いけごし)」でございます。
これは、セリで落とした魚を、すぐには出荷せず、生簀で休ませるという技でございます。
なぜ休ませるのか
- 漁のストレスで、魚は消耗している 網にかかり、引き上げられ、選別され。魚にとっては大変な一日です
- 疲れた魚は、身に乳酸がたまる 味が落ちる原因になります
- 生簀で休ませると、疲労から回復する 身が落ち着き、味が戻ります
- 胃の中が空になる これも鮮度保持に関わります
- 結果として、旨みが増すとされます
明石では、港に海水を引き込んだ生簀がございます。
明石海峡の海水を、そのまま使う。だから魚にとっては、さっきまでいた海と同じ環境でございます。ここで一晩、あるいは数日間休ませてから出荷するのです。
「獲ってすぐ」がいちばんではない——これは意外に思われるかもしれません。
けれど、疲れきった魚より、落ち着いた魚のほうが美味しい。人間と同じでございますね。慌ただしい日の食事より、ゆっくりした日の食事のほうが美味しいのと、似たようなものかもしれません🐟
6. セリの現場で、何が起きているか
セリというのは、魚の価値が決まる場でございます。
セリの流れ
- ① 下見 仲買人が、並べられた魚を見て回ります。大きさ、傷の有無、脂の乗り、活きのよさ。ここで目利きが問われます
- ② セリ開始 競り人が声を上げ、仲買人が値をつけていきます
- ③ 落札 いちばん高い値をつけた人が買い付けます
- ④ 仕分け 買った魚を、それぞれの行き先ごとに分けます
- ⑤ 出荷 市場、料理屋、小売店、加工業者へ
セリで面白いのは、同じ魚でも値段がまったく違うことでございます。
同じ日に獲れた同じ種類の鯛でも、大きさ、傷、活きのよさによって、値段が何倍も変わります。プロの目は、そこまで見ているのですね。
そして、よい魚を買うにはよい仲買人とのつながりが要ります。お金さえ出せば買えるというものではございません。長いお付き合いの中で、「あそこなら、いい魚を回してもらえる」という信用が生まれるのです😊
7. 鮮度を保つ技術|活け締め・神経締め
魚を美味しく保つには、締め方がたいへん重要でございます。
主な締め方
氷締め
氷水に入れて一気に冷やす方法。手軽で、小型の魚に向きます。大量に処理できるのが利点です。
活け締め
生きている魚を、その場で即座に締めて血を抜く方法。
魚は暴れると体内に乳酸がたまり、味が落ちます。また血が残ると生臭さのもとになります。活け締めは、この二つを防ぎます。
神経締め
活け締めをさらに進めた方法で、神経を破壊して死後硬直を遅らせます。
専用の細い針金を背骨に沿って通します。これにより、魚の身が硬くなるまでの時間が延び、鮮度が長持ちするとされます。
手間と技術が要りますが、高級魚にはこの処理がなされることが多いです。
どう締めるかで、味が変わる。
同じ海で、同じ日に獲れた魚でも、締め方ひとつで別物になります。これは漁師さんと加工業者の技術の見せどころでございます🐟
8. 運ぶという仕事
獲れた魚を、どう運ぶか。これも大きな仕事でございます。
運び方
- 活魚輸送 生きたまま運びます。水槽と酸素供給装置を積んだ「活魚車」を使います。もっとも鮮度が保てますが、設備も手間もかかります
- 氷詰め(鮮魚) 締めた魚を氷詰めにして運びます。もっとも一般的です
- 冷凍輸送 凍らせて運びます。遠方へ、時間をかけて運べます
日本の魚食の歴史は、「運ぶ技術」の歴史でもございます。
昔は、海から遠い土地では生魚が食べられませんでした。だから干物にし、塩蔵し、なれずしにした。
それが鉄道になり、氷になり、冷蔵になり、冷凍になり、そして宅配便になった。今は、全国どこへでも翌日に届く——これは、ほんの数十年で実現したことでございます😊
9. 通販の場合|加工から発送までの流れ
さて、通販の場合はどうなるのでしょう。
当店のような加工・通販の店では、ここから先の工程が加わります。
加工から発送まで
- ① 仕入れ その日にいちばんよいものを選んで仕入れます
- ② 下処理 うろこを取り、内臓を出し、血合いを洗い流す。ここが味を決めます
- ③ さばく 用途に合わせて。刺身用に引く、頭を割る、あらを分ける
- ④ 調理 煮る、焼く、〆る。それぞれの商品に仕上げます
- ⑤ 急速冷凍 できあがったものを、一気に凍らせます
- ⑥ 包装 一食分ずつ、あるいはセットのかたちに
- ⑦ 検品 異物がないか、量は正しいか、包装に不備はないか
- ⑧ 梱包 箱に詰め、保冷材を入れ、緩衝材で守ります
- ⑨ 発送 冷凍便でお届けします
この中でいちばん手がかかるのが、②の下処理でございます。
お客さまからは見えない工程です。写真にも写りません。けれどここを丁寧にやるかどうかで、味がまったく変わります。
特に鯛の頭を使うかぶと煮では、うろこ、えら、血合い、そして霜降り。この工程を省けば、どれだけ煮込んでも生臭さが残ります。逆にきちんとやれば、驚くほど上品な味になるのです🐟
10. 冷凍について、正直なお話
「冷凍」と聞くと、生より劣るとお思いになる方が多いかもしれません。
正直に申し上げます。獲れたてを、その場で食べるのがいちばん美味しいのは事実でございます。これは動かしようがありません。
けれど、冷凍には冷凍のよさがございます。
冷凍の利点
- 召し上がる日を選べる 急かされません。これは贈り物では決定的な利点です
- 遠方へ届けられる 生では届かない距離へも
- いちばんよい状態で止められる 加工した直後に凍らせれば、その状態が保たれます
- 食品ロスが減る 傷ませてしまう心配がありません
大事なのは「凍らせ方」です
冷凍で味が落ちる最大の原因は、氷の結晶でございます。
ゆっくり凍らせると、氷の結晶が大きく育ちます。この大きな結晶が細胞を壊してしまい、解凍したときにドリップ(うまみを含んだ水分)が流れ出てしまうのです。
これを防ぐのが急速冷凍。短時間で一気に凍らせると、氷の結晶が小さくとどまり、細胞の損傷が少なくて済みます。
特にマイナス1度からマイナス5度あたり——氷の結晶がいちばん育つ温度帯を、いかに素早く通過させるかが勝負でございます。
解凍も大事です
- 冷蔵庫でゆっくり解凍する これが基本です。前日から冷蔵庫へ移してくださいませ
- 常温に放置しない 外側だけ溶けて、品質が落ちます
- 急ぐときは、氷水につける 袋のまま、氷水に。これは比較的きれいに解凍できます
- 電子レンジの解凍は慎重に 加熱ムラが出やすいので、仕上げは自然解凍のほうが安心です
- 調理済みのものは、そのまま温めて 解凍の手間がいりません
せっかく丁寧に凍らせても、解凍で失敗すれば台無しでございます。同梱の説明書きを、ぜひお読みくださいませ😊
11. 明石めで鯛やの場合
最後に、当店のことをお話しさせてくださいませ。
当店の鯛は、愛媛県産でございます
「明石めで鯛や」という屋号ですが、鯛そのものは愛媛県産でございます。脂のりのよいものを選んでおります。
「明石」という名は、明石の料亭で受け継がれてきた味づくりに由来するもので、魚の産地を表すものではございません。
なお、生鯛しゃぶには、明石の焼き穴子を入れております。
海から上がった魚が、ご家庭の食卓に並ぶまで。
間には、漁師さん、仲買人さん、運送の方、加工する者、そして配達の方——驚くほどたくさんの人の手が入っております。
そのどこか一つでも欠ければ、お魚は食卓に届きません。当たり前のようでいて、当たり前ではないことでございます😊
12. まとめ
この記事のポイント
- 魚が食卓に届くまでには十の段階があり、どこかで手を抜けば味が落ちます
- 明石の漁場は港からごく近く、朝出て昼には戻れます
- 明石には「昼セリ」という仕組みがあり、その日の魚をその日のうちに出荷できます
- 「活け越し」——セリ後に生簀で魚を休ませる技。疲労から回復させ、味を戻します
- 「獲ってすぐ」が必ずしもいちばんではないというのが、明石の知恵です
- 締め方(氷締め・活け締め・神経締め)で、味も日持ちも変わります
- 通販では下処理がいちばん手のかかる工程。見えませんが、味を決めます
- 冷凍で大事なのは凍らせ方。急速冷凍なら氷の結晶が小さく、細胞の損傷が少なくて済みます
- 解凍は冷蔵庫でゆっくり。常温放置は避けてくださいませ
- 当店の鯛は愛媛県産。生鯛しゃぶには明石の焼き穴子を入れております
お魚を召し上がるとき、その一切れがどこから来たかを少しだけ思い浮かべてみてくださいませ。
未明に船を出した漁師さんがいて、目利きをした仲買人がいて、生簀で休ませた人がいて、丁寧に下処理をした者がいて、そして運んでくださった方がいる。
そう思うと、「いただきます」という言葉の意味が、少し違って感じられるかもしれません🐟😊









女将のひとこと
私どもの飲食部門である「ぜんさく」では、長いあいだおもてなしを大切にしてまいりました。
お客さまをお迎えして、お料理をお出しして、お見送りする。目の前にお客さまがいらっしゃるからこそできることが、飲食店にはたくさんございます。
ですから明石めで鯛やを立ち上げたとき、ひとつ決めたことがございました。
おもてなしも一緒に乗せて、お客さまへ商品をお届けしよう。
通販では、お客さまのお顔が見えません。箱を開けていただく瞬間にも、立ち会えません。
だからこそ「できることは全部やろう」と考えまして、ご注文をいただくところから、お品を作るところ、そして梱包まで、各所に私どもなりのこだわりを取り入れております。
ひとつひとつは、本当に小さなことでございます。声を大にして言うようなものでもありません。
けれど気づいてくださるお客さまがいらっしゃるのです。そういうお声をスタッフに伝えると、みんな本当に喜びます。見えないところまで手をかけるというのは、正直なところ手間がかかります。それでも続けられるのは、こういう瞬間があるからなのですね🐟