明石焼きとたこ焼きの違いとは?明石を代表する2大グルメを徹底比較
こんにちは、明石めで鯛やの女将です🐟
「明石焼きって、たこ焼きとどう違うんですか?」——明石の外から来られた方に、よく聞かれる質問でございます。
見た目は似ております。どちらも丸くて、中にたこが入っている。けれど食べてみると、まったくの別物でございます。
生地が違う、食べ方が違う、道具も違う。そして実は——明石焼きのほうが、たこ焼きよりずっと古いのです。
この記事では、明石焼きとたこ焼きの違いを、生地から歴史まで徹底的に比べてみます。明石にお越しの際の、いただき方のコツもお伝えいたしますね😊
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1. ひと目でわかる|明石焼きとたこ焼きの違い
まずは一覧でご覧くださいませ。
| 明石焼き(玉子焼) | たこ焼き | |
|---|---|---|
| 生地 | 卵がたっぷり。じん粉を使う | 小麦粉が主体 |
| 食感 | ふわとろ。箸で持つと崩れそう | 外はカリッ、中はとろり |
| 食べ方 | 温かい出汁につけて | ソースをかけて |
| 具 | 基本はたこのみ | たこ、天かす、紅生姜、ねぎなど |
| トッピング | なし(出汁に三つ葉やねぎ) | 青のり、かつおぶし、マヨネーズなど |
| 焼く道具 | 銅板 | 鉄板 |
| 出し方 | 「あげ板」という傾いた木の板に | 舟形の容器やお皿に |
| 一人前 | 15〜20個ほど | 6〜10個ほど |
| 食べる場面 | 軽い食事として | おやつ・間食として |
| 持ち方 | 箸 | 爪楊枝 |
こうして並べますと、共通点は「丸くて、たこが入っている」ことくらいでございますね。
まったく別の食べ物だと思っていただいたほうが、近いかもしれません🐟
2. 地元では「明石焼き」と言いません
まず、ここからお話ししなければなりません。
明石の人は、これを「明石焼き」とは呼びません。
地元での呼び名は「玉子焼(たまごやき)」でございます。
呼び名のややこしさ
- 地元の呼び名 「玉子焼」または「たまご焼き」
- 市外での呼び名 「明石焼き」
- なぜ分かれたか 地元では「玉子焼」で通じますが、外では卵焼き(出汁巻き卵)と混同されてしまいます。そこで産地名をつけて「明石焼き」と呼ばれるようになりました
ですから、明石のお店で「明石焼きください」と言っても、もちろん通じます。けれどお店の看板や品書きには「玉子焼」と書いてあることがほとんどでございます。
はじめて明石にいらした方が「玉子焼って、あの卵焼きのこと?」と戸惑われる——これは明石でよくある光景でございます😊
3. 生地の違い|ふわとろの正体は「じん粉」
明石焼きのいちばんの特徴は、あのふわとろの食感でございます。
箸で持ち上げると崩れそうなほどやわらかく、口に入れるととろけてしまう。たこ焼きとは明らかに違う、この食感。
その正体は、二つの材料にございます。
① 卵がたっぷり
明石焼きは、名前のとおり卵が主役でございます。小麦粉に対して卵の割合が、たこ焼きよりずっと多いのです。
だから生地が黄色く、ふんわりと仕上がります。
② じん粉(沈粉・浮粉)
これが明石焼きの秘密でございます。
じん粉とは、小麦粉からグルテン(たんぱく質)を取り除いた、でんぷんの粉のこと。「浮粉(うきこ)」とも呼ばれます。
グルテンがないので、生地に粘りが出ません。だから、あのとろけるような食感になるのです。
じん粉は和菓子にも使われる材料で、関西の食文化と深いつながりがございます。
卵の多さとじん粉。この二つが、明石焼きのふわとろを作っております。
小麦粉だけで作ったのでは、どうやってもこの食感にはならないのでございます🐟
4. 食べ方の違い|出汁か、ソースか
見た目でいちばん分かりやすい違いが、ここでございます。
明石焼きは、出汁につけて食べます
お椀に入った温かい出汁が一緒に出てまいります。昆布と鰹の、澄んだすまし汁でございます。
そこに三つ葉やねぎが浮かんでいることも。この出汁に、焼きたての玉子焼をちょんとつけていただきます。
ソースも青のりもマヨネーズもかけません。生地そのものに薄く味がついており、出汁と合わせて完成する——引き算の食べ物でございます。
たこ焼きは、ソースをかけて食べます
ソース、青のり、かつおぶし、お店によってはマヨネーズも。濃い味で、しっかり主張する食べ物でございます。
こちらは足し算の食べ物ですね。
この違いは、そのまま関西の食文化の二つの顔を表しているようにも思います。
明石焼きは出汁を生かす上品な方向、たこ焼きはソースで押す賑やかな方向。どちらも関西らしく、どちらも美味しい。優劣ではなく、別の道でございます😊
5. 道具の違い|銅板と「あげ板」
焼くのは「銅板」
明石焼きは、銅の焼き板で焼きます。
銅は熱の伝わり方が非常によい金属です。やわらかい生地を均一に、短時間で焼き上げるには、この熱伝導が欠かせません。
たこ焼きは鉄板が一般的ですので、ここも違いでございます。
出すのは「あげ板」
明石焼きは、傾斜のついた木の板にのせて出されます。これを「あげ板」と呼びます。
なぜ板なのか。やわらかすぎて、容器に入れると崩れてしまうからでございます。
そして斜めになっているのは、お客さまが取りやすいようにという工夫。小さなことですが、よくできております。
道具までもが違う。似て非なるものというのは、まさにこのことでございますね🐟
6. 具の違い|たこだけか、いろいろか
明石焼きの具
基本は、たこだけでございます。
卵と出汁の味を生かす食べ物ですので、余計なものは入れません。そのたこも、できれば明石だこ——足が短く太い、身の締まったたこを使います。
お店によっては、穴子や海老を入れた変わり種もございますが、王道はたこのみでございます。
たこ焼きの具
たこに加えて、天かす、紅生姜、青ねぎなどが入ります。
いろいろな味が重なって、賑やかな一口になります。
具の数にも、引き算と足し算の違いが出ております。明石焼きは、とことん引いていく食べ物なのでございます😊
7. 歴史|実は明石焼きのほうが古いのです
ここが、意外に思われるところかもしれません。
明石焼きのほうが、たこ焼きよりずっと古いのです。
それぞれの歴史
- 明石焼き(玉子焼) 江戸時代の後期から明治にかけて生まれたと言われます。150年以上の歴史がございます
- たこ焼き 昭和10年(1935年)ごろ、大阪で生まれたとされます。まだ百年に満たない食べ物です
「明石焼きは、たこ焼きの明石版でしょ?」——そう思っていらっしゃる方が多いのですが、実は順番が逆なのでございます。
明石焼きが先にあり、たこ焼きが後から生まれた。しかも、たこ焼きの誕生には明石焼きが関わっていたという説まであるのです🐟
8.「明石玉」から生まれたという説
明石焼きの起源について、興味深い説がございます。
それが「明石玉」のお話でございます。
明石玉とは
江戸時代の後期から明治にかけて、明石では「明石玉」という工芸品が作られておりました。
これは珊瑚の代用品——簪(かんざし)や装飾品に使う、人工の玉でございます。
この明石玉を作る工程で、卵白が接着剤のように使われておりました。
では、卵黄はどうなるのか
卵白だけを使うのですから、卵黄が大量に余ります。
もったいない。何かに使えないか。——そこで生まれたのが、卵をたっぷり使った玉子焼だった、という説でございます。
「もったいない」から生まれた名物。
これが本当なら、なんとも日本らしい話でございます。余った材料を工夫して食べ物にする——その知恵が、150年続く名物になったわけですから。
※この起源については諸説ございます。明石玉説は広く語られているものですが、はっきりと証明されているわけではございません。
ちなみに、一尾の魚を余さず食べる日本の文化も、根っこは同じでございますね。捨てずに、工夫して、美味しくする。明石焼きも鯛のかぶと煮も、同じ精神から生まれているのかもしれません😊
9. たこ焼きの誕生と、明石焼きのつながり
さて、たこ焼きのお話でございます。
たこ焼きは昭和10年(1935年)ごろ、大阪で生まれたとされております。
たこ焼き誕生の物語
- 当時、大阪には「ラヂオ焼き」という食べ物がございました。小麦粉の生地に牛すじやこんにゃくを入れて丸く焼いたものです
- あるとき、お客さまが「明石ではたこを入れとるらしいで」と教えたと言われます
- そこで店主が、牛すじの代わりにたこを入れてみた
- これがたこ焼きの始まり——という説が、広く語られております
※この逸話にも諸説ございます。ただ、明石の玉子焼がたこ焼きの誕生に何らかの影響を与えたという見方は、よく知られているところです。
もしこの話が本当なら、たこ焼きの「たこ」は、明石から来たということになります。
明石の玉子焼が大阪に伝わり、ソースをかける大阪の流儀と合わさって、たこ焼きになった。そして今では、たこ焼きのほうが全国に広まっている——。
親より子のほうが有名になった、というところでしょうか。けれど明石の者としては、「元はこっちやで」と少しだけ胸を張りたくなるのでございます🐟
10. 明石焼きの美味しい食べ方・五つのコツ
はじめて召し上がる方のために、いただき方のコツをお伝えいたします。
① 箸で、そっとすくう
明石焼きは驚くほどやわらかいです。つまもうとすると崩れます。
箸を下から差し込んで、すくい上げるように持ってくださいませ。これがいちばん失敗しません。
② 出汁にひたしすぎない
長くつけると、崩れてしまいます。さっと浸して、すぐ口へ。
あるいは、お椀に入れてすぐにレンゲですくう、という食べ方も。
③ 熱いので気をつけて
焼きたては、中がとても熱うございます。最初の一口は特にご注意を。
慌てず、少し冷ましてから召し上がってくださいませ。
④ 薬味を出汁に入れる
三つ葉、青ねぎ。お店に用意があれば、出汁に入れてみてください。香りが立って、味が一段よくなります。
女将は三つ葉が絶対派でございます。鯛の潮汁でも、鍋の締めの雑炊でも、必ず入れます😊
⑤ 途中で味を変えてみる
15〜20個もございますので、途中で飽きることがあるかもしれません。
お店によってはソースも置いてあることがございます。半分出汁で、半分ソースで——という食べ方も、地元では珍しくありません。
「邪道では」とお思いになるかもしれませんが、ご心配なく。美味しければ、それでよいのです。
11. ご家庭で作れるでしょうか
正直に申しますと、少し難しゅうございます。
家庭で作るときの壁
- じん粉が手に入りにくい スーパーには置いていないことが多いです。製菓材料店や通販で探すことになります
- 銅板がない たこ焼き器でも作れますが、熱の伝わり方が違います
- 生地がやわらかくて、返すのが難しい これがいちばんの難関です。たこ焼きのようには、くるりと返りません
- 出汁も要る 玉子焼だけでなく、つけ出汁も用意しなければなりません
それでも作ってみるなら
- じん粉がなければ、片栗粉で代用 完全に同じにはなりませんが、近い食感にはなります
- たこ焼き器で、低めの温度で 強火にすると表面だけ焼けて、中が生になります
- 返すのは、半分固まってから 慌てずに、ゆっくりと
- 崩れても気にしない 味は同じでございます
- 出汁は、昆布と鰹のすまし汁で 薄味に仕上げて、三つ葉を添えて
明石焼きは、お店で食べるのがいちばんかもしれません。あの銅板と、職人さんの手つき。あれは家庭では再現できないものでございます🐟
12. 明石の食文化を支える「出汁」
明石焼きのお話をしてまいりましたが、ここで気づかれた方もいらっしゃるかもしれません。
明石の食は、出汁でできております。
明石の食と出汁
- 明石焼き つけ出汁がなければ成立しません
- 鯛の潮汁 鯛のあらと塩だけ。出汁そのものを飲む料理です
- 鯛めし お米が吸うのは出汁。味はここで決まります
- 鯛しゃぶ 鯛をくぐらせるたびに、出汁が深くなります
- 穴子のお吸い物 焼き穴子から出る、香ばしい出汁
明石焼きがソースではなく出汁で食べられてきたのは、偶然ではないと思うのです。
よい魚が獲れる土地には、よい出汁の文化が育ちます。そして出汁の文化がある土地では、濃い味で覆う必要がない。素材の味を、出汁で引き出す——これが明石の、そして関西の食の考え方でございます。
当店の鯛の昆布〆も、鯛と昆布とお塩だけで仕上げております。余計なものは入れません。だからこそお塩加減がごまかしのきかないところになるのですが、そこが面白いところでもございます😊
13. 明石にお越しの際は
明石焼きは、明石の町のあちこちで召し上がっていただけます。
明石でのいただき方
- 看板は「玉子焼」 「明石焼き」と書いていないお店もございます。探すときは「玉子焼」の文字を
- お店ごとに味が違います 生地の配合、出汁の濃さ、たこの大きさ。食べ比べが楽しいのも明石焼きの魅力です
- お昼ごはんにちょうどよい 15〜20個ございますので、軽い食事として成立します
- お値段は手頃 気軽に召し上がれるのが、庶民の名物らしいところです
- 魚の棚(うおんたな)商店街 明石駅のすぐ南にある商店街。鮮魚店が並び、玉子焼のお店もございます。明石の食を知るには、まずここへ
明石にお越しの際は、ぜひ本場の玉子焼を召し上がってくださいませ。
そして明石まで来られない方には、明石の料亭で受け継がれた味づくりを、お手元までお届けいたします。生鯛しゃぶには、明石の焼き穴子も入っておりますよ😊
※当店の鯛は愛媛県産でございます。「明石」は、明石の料亭で受け継がれた味づくりに由来する屋号で、魚の産地ではございません。
14. まとめ
明石焼きとたこ焼きの違い
- 生地 明石焼きは卵たっぷり+じん粉。たこ焼きは小麦粉主体
- 食感 明石焼きはふわとろ。たこ焼きは外カリ中とろ
- 食べ方 明石焼きは出汁、たこ焼きはソース
- 具 明石焼きは基本たこだけ。たこ焼きは天かすや紅生姜も
- 道具 明石焼きは銅板で焼き、あげ板にのせて出します
- 歴史 明石焼きのほうがずっと古い。江戸後期〜明治に対し、たこ焼きは昭和10年ごろ
覚えておくと楽しいこと
- 地元では「玉子焼」と呼びます。「明石焼き」は市外向けの呼び名です
- ふわとろの正体はじん粉(浮粉)。グルテンがないので粘りが出ません
- 起源は「明石玉」という工芸品で余った卵黄から、という説があります
- たこ焼きの「たこ」は、明石から来たという説も
- 食べるコツは箸ですくう・つけすぎない・薬味を出汁に
- 明石の食は出汁でできています。玉子焼も、潮汁も、鯛めしも
明石焼きとたこ焼き。どちらが上ということはございません。別の食べ物として、それぞれに美味しいのです。
ただ、明石焼きのほうが先にあって、そこから何かが伝わってたこ焼きが生まれた——そう考えますと、食べ物の歴史というのは面白いものでございますね。
明石にお越しの際は、ぜひ「玉子焼」の看板を探してみてくださいませ。箸ですくって、出汁にちょんとつけて。きっと、驚かれると思います🐟😊

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女将のひとこと
女将も、たまに無性に明石焼きが食べたくなります。
地元におりますと、毎日食べるものではございません。けれど年に何度か「今日は玉子焼にしよか」という日があるのですね。あのふわとろと、出汁の香り。やはり落ち着きます。
そして、お取引先の方がはじめて明石にいらしたとき——お昼に一緒に食べに行くことがございます。
「これが明石焼きですか」と驚かれて、箸で持ち上げようとして崩して、笑って。そういう時間が、ずいぶん距離を縮めてくれるのです。
かしこまった席のお食事より、玉子焼を並んで食べるほうが、よほど打ち解けるというのは不思議なものでございますね🐟