明石の鯛の価格が高い理由!希少性・漁獲量・流通コストから考える
こんにちは、明石めで鯛やの女将です🐟
「鯛って、どうしてこんなに高いんですか」——はっきり聞かれることは少ないのですが、そう思っていらっしゃる方は多いと思います。
スーパーの切り身と、料亭で出てくる鯛。同じ「鯛」という名前なのに、値段が何倍も違う。これは正直、分かりにくいところでございます。
この記事では、鯛の価格がどう決まっているのかを、できるだけ正直にご説明いたします。
商売をしている者が価格の話をすると、どうしても「だから高くても仕方ない」という言い訳に聞こえがちでございます。ですからこの記事では、当店の価格についても包み隠さずお話しいたします。納得できないものに、お金を出していただきたくはございませんので😊
1.「高い」と感じるのは、当然のことです
まず申し上げておきたいのですが、「高い」とお感じになるのは、まったく当然のことでございます。
鶏むね肉なら100グラム数十円で買えるのに、鯛は桁が違う。同じたんぱく質なのに、なぜこんなに差があるのか。そう思われるのは自然なことです。
なぜ分かりにくいのか
- 同じ「鯛」でも、中身がまったく違う 天然か養殖か、どこの海か、どう扱われたか
- 見た目では判断しにくい 切り身になってしまうと、素人にはほぼ見分けがつきません
- 原価の内訳が見えない 魚そのものの値段、運賃、加工賃、どれがいくらなのか分かりません
- 比べる基準がない 「相場」を知らなければ、高いか安いか判断できません
ですからこの記事では、何にお金がかかっているのかを分解してご説明いたします。
そのうえで「それなら納得できる」と思っていただけるか、「やっぱり高い」と思われるか。判断は、お客さまにお任せいたします🐟
2. 鯛の価格を決める、六つの要素
鯛の価格は、おおまかに六つの要素で決まります。
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| ① 獲れる量 | 少なければ高くなる。これが基本です |
| ② 天然か養殖か | 一般に天然のほうが高価です |
| ③ 扱いの手間 | 活け越し、神経締めなど、手をかけるほど高くなります |
| ④ 運賃 | 活魚輸送、冷凍便。これが思いのほか大きいのです |
| ⑤ 加工の手間 | 下処理、調理。人の手がかかります |
| ⑥ 需要 | 欲しがる人が多ければ、値は上がります |
この六つが重なって、最終的な値段になります。順に見てまいりましょう😊
3. 理由①|漁獲量が減っています
これが、いちばん大きな理由でございます。
明石の魚は、たいへん獲れなくなっております。
明石鯛も、明石だこも、明石の穴子も。かつては当たり前に食卓にあったものが、今は「特別なごちそう」になってしまいました。明石の人でさえ、食べる機会が減ってしまったのでございます。
指摘されている要因
- 海の栄養の変化 瀬戸内海では、海水中の栄養が減ってプランクトンが育ちにくくなっているのではないかという指摘がございます。かつての水質汚濁対策が進んだ結果、今度は「きれいすぎる海」になったとも言われます
- 海水温の上昇 魚の生息域や産卵の時期が変わってきていると言われます
- 漁業者の減少と高齢化 獲る人そのものが減っております
- 燃料費の高騰 船を出すだけでお金がかかります
※原因については、現在も研究と議論が続いております。ここに挙げたのは、よく指摘されている要因でございます。
少ししか獲れないものは、高くなる。これは市場の原理として、どうしようもないことでございます。
そして悲しいことに、この傾向は当分続くと見られております🐟
4. 理由②|天然物の希少性
「天然」と「養殖」では、一般に天然のほうが高価でございます。
なぜでしょうか。
天然物が高い理由
- 獲れる量が読めない 天候、潮、季節。今日獲れても、明日は獲れないかもしれません
- 大きさや品質にばらつきがある 同じ大きさをそろえるのが難しいのです
- よいものは限られる 獲れた中で「上物」と呼べるのは、ごく一部でございます
- 計画生産ができない 「来月100尾ください」という注文に応えられません
- ブランド産地のものは特に 明石鯛のようなブランドは、料亭や寿司屋が指名で買い付けます
特に「大きさをそろえられない」というのは、商売の上では大きな問題でございます。
お客さまに同じ商品をお届けするには、同じ大きさの魚が要ります。けれど天然物は、大きいのも小さいのも混ざって獲れる。使える魚を選び抜くと、残りが余る——この無駄が、価格に乗ってまいります。
天然物が高いのは、「選び抜く」ためのコストでもあるのですね😊
5. 理由③|手間のかかる扱い
よい鯛というのは、獲ったあとの扱いでも差がつきます。
手間のかかる工程
- 一本釣り 一尾ずつ釣り上げるので、魚が傷つきません。けれど網漁に比べて、時間も人手もかかります
- 活け越し セリ後に生簀で休ませる明石の技。場所も、海水の管理も、日数も必要です。その間、売上にはなりません
- 神経締め 専用の針金を使い、一尾ずつ処理します。技術も時間も要ります
- 活魚輸送 水槽と酸素装置を積んだ車で運びます。設備投資が大きいのです
- 選別 人の目で一尾ずつ見ます
特に活け越しは、分かりやすい例でございます。
セリで買った魚を、すぐ売らずに生簀で休ませる。その数日間、お金になりません。生簀の管理にも手間がかかります。
それでもやるのは、そのほうが美味しくなるから。この「それでもやる」の部分が、価格に乗っているわけでございます🐟
6. 理由④|運ぶのにお金がかかります
これは、通販をしておりますと痛感いたします。
魚を運ぶのは、本当にお金がかかります。
輸送にかかるもの
- 冷凍便・冷蔵便の運賃 常温便よりずっと高くなります
- 保冷材・ドライアイス 夏場は特に多く必要です
- 発泡スチロールの箱 段ボールだけでは済みません
- 活魚輸送なら、さらに 水槽、酸素、専用車両。設備も燃料も
- 再配達のコスト お留守のときの負担も、どこかが負っております
正直に申しますと、商品価格に占める送料の割合は、決して小さくありません。
特に3,000円台の商品では、送料の比率がかなり高くなります。本体2,500円+送料1,200円なら、お客さまから見れば3,700円のお買い物でございます。
ですから「少し良いものを一つ」のほうが、送料の比率が下がって結果的にお得——というのは、本当のお話でございます😊
7. 理由⑤|下処理と加工の手間
調理済みの商品になりますと、ここが大きく乗ってまいります。
加工にかかる手間
- うろこを取る 頭のうろこは硬く、手間がかかります
- 内臓・えらを除く 臭みのもとを、確実に
- 血合いを洗い流す ここを丁寧にやるかどうかで、味が決まります
- 霜降り(湯引き) 熱湯をかけて、ぬめりと残った血を落とします
- さばく 薄く引く、頭を割る、あらを分ける。技術が要ります
- 調理する 煮る、焼く、〆る
- 急速冷凍 設備が必要です
- 包装・検品 人の目で確認します
これらはすべて人の手で行う仕事でございます。
機械化できる部分は限られております。特に下処理は、一尾ずつ、人が手で確かめながらやるしかありません。
そして——この工程は、お客さまからは見えません。写真にも写りません。けれどここを省けば、どんなによい鯛でも生臭くなってしまう。
見えないところに、いちばんお金がかかっている。これが加工品の実情でございます🐟
8. 理由⑥|ブランドとしての需要
最後は、需要のお話でございます。
明石鯛のようなブランド魚は、料亭や高級寿司店が指名で買い付けます。
需要が価格を押し上げる仕組み
- プロが競って買う セリで値が上がります
- 「明石の」という名前に価値がある お品書きに書けるという価値です
- 量が限られている 欲しい人が多く、物が少なければ、値は上がる一方です
- 贈答需要 年末などは特に集中します
これは、ある意味では正直な値段でございます。
誰かが不当に吊り上げているのではなく、欲しい人が多いから高くなっている。プロの料理人が「この値段でも買う」と判断した結果の価格でございます。
逆に申しますと、ブランド名が付くだけで値が上がるという面も否定できません。同じ海で獲れた魚でも、名前が付くか付かないかで変わってしまうのです。
ここは、お客さまも冷静に見ていただきたいところでございます😊
9. 天然と養殖、どちらがよいのでしょう
これは、よくいただくご質問でございます。
正直にお答えいたします。どちらがよいとは、一概に言えません。
| 天然 | 養殖 | |
|---|---|---|
| 価格 | 高い | 比較的手頃 |
| 品質の安定 | ばらつきがある | 安定している |
| 脂の乗り | 季節で大きく変わる | 安定してのっている |
| 身の締まり | 締まっている | やややわらかいことも |
| 大きさ | そろわない | そろえられる |
| 供給 | 不安定 | 計画的 |
料理によって、向き不向きがあります
- お刺身 身の締まった天然物が好まれることが多いです
- しゃぶしゃぶ ほどよく脂がのっているほうが向きます。養殖のよさが出る料理です
- 煮る・焼く 脂があったほうがふっくら仕上がります
- 出汁をとる これは天然物のあらが力強いです
近年の養殖技術は、本当に進歩しております。餌の工夫、育て方の工夫。「養殖だから劣る」という時代ではございません。
ただし養殖にもコストがかかります。特に餌代は、国際的な価格上昇の影響を受けており、養殖魚の価格も上がってきております。
天然は高い、養殖は安い——という単純な話でもなくなってきているのが実情でございます🐟
10.「安い鯛」と何が違うのか
では、スーパーで安く売られている鯛と、高い鯛は何が違うのでしょう。
価格差の中身
- 産地 国産か輸入か。国内でも産地によって差があります
- 大きさ 小さい鯛は安くなります。身が少なく、味も乗りきっていないことが
- 鮮度と扱い 締め方、保存方法、何日経っているか
- 季節 産卵直後の麦わら鯛の時期は、味が落ちるぶん安くなります
- 処理の丁寧さ うろこや血合いがきちんと取れているか
- 流通の段階数 間に入る業者が多いほど、価格は上がります
ここで大事なことを申し上げます。
安い鯛が悪いわけではございません。
ふだんのおかずなら、手頃な鯛で十分でございます。むしろ毎日の食卓に、高級魚は要りません。
問題は「使い分け」でございます。ふだんは手頃なものを、お祝いの日には少し良いものを。そういう付き合い方がいちばん健やかだと思っております😊
11. 正直なお話|当店の価格について
さて、ここまで一般論を申し上げてまいりました。
最後に、当店の価格について正直にお話しいたします。
当店の鯛は、明石鯛ではございません
繰り返しお伝えしておりますが、当店の鯛は愛媛県産でございます。
「明石」という名は、明石の料亭で受け継がれてきた味づくりに由来する屋号で、魚の産地ではございません。
ですから、明石鯛のブランド価格は乗っておりません。そこはご安心ください。
では、当店の価格は何でできているのか
- 脂のりのよい愛媛の鯛を選ぶ、仕入れ代
- 下処理の人件費 うろこ、えら、血合い、霜降り。ここは手を抜きません
- 調理の手間 料亭の味づくりをもとにした、出汁と塩加減
- 急速冷凍の設備と電気代
- 包装・検品・梱包の手間
- 冷凍便の送料
※このうち、いちばん比重が大きいのは「人の手」でございます。
当店がお金をかけているのは、魚のブランドではなく、手間でございます。
特に下処理。うろこを取り、えらを外し、血合いを落とし、霜降りをする。この工程はお客さまには見えませんし、写真にも写りません。
けれど、ここを省けば味は確実に落ちます。だから省きません。その手間が、価格になっております。
12. 納得してお選びいただくために
最後に、価格に納得して買い物をするためのコツをお伝えいたします。これは当店に限らず、どこでお買い物をされる場合でも使える考え方でございます。
価格を見極める五つの視点
- ① 送料込みで比べる 本体価格だけでは比べられません
- ② グラム単価で計算する 「〇人前」より確実です
- ③ 何が含まれているかを揃える 出汁付きか、たれ付きか、下処理済みか
- ④ 産地が書いてあるか見る 書いてあるお店のほうが信頼できます
- ⑤ 安すぎるものには理由がある 悪いわけではなく、そういう商品だということです。量が少ない、小さい、下処理が必要、など
ご予算別の考え方
- ふだんのおかず 手頃なもので十分でございます。毎日高級魚を食べる必要はありません
- 3,000円前後 鯛めしセットなど、一食分がまるごと成立するもの。毎月5日には鯛のかぶと煮を限定販売しております
- 5,000円前後 鯛の食べ比べセットやカードギフト。贈答にいちばん使いやすい価格帯です
- 10,000円前後 幸せの鯛しゃぶセット。ご家族で囲むご馳走として
13. まとめ
鯛の価格を決める六つの要素
- ① 獲れる量 明石の魚はたいへん獲れなくなっております
- ② 天然か養殖か 天然は「選び抜くコスト」が乗ります
- ③ 扱いの手間 一本釣り、活け越し、神経締め。手をかけるほど高くなります
- ④ 運賃 冷凍便の送料は決して小さくありません
- ⑤ 加工の手間 見えない下処理に、いちばん人手がかかります
- ⑥ 需要 プロが競って買うから上がる。ブランド名だけで上がる面も
覚えておきたいこと
- 安い鯛が悪いわけではありません。ふだんのおかずには手頃なもので十分です
- 天然と養殖に優劣はなく、料理によって向き不向きがあります
- しゃぶしゃぶには、ほどよく脂がのっているほうが向きます
- 価格は送料込み・グラム単価で比べる
- 当店の鯛は愛媛県産。明石鯛のブランド価格は乗っておりません
- 当店がお金をかけているのは魚のブランドではなく、手間でございます
「高い」と感じるものに、無理をして手を出す必要はございません。
けれど何にお金がかかっているのかを知ったうえで選んでいただけたら、同じ買い物でも納得が違うと思うのです。
ふだんは手頃なものを、お祝いの日には少し良いものを。そういう使い分けが、いちばん健やかでございます。
そして「今日は少し良いものを」という日に、当店を思い出していただけましたら、これほど嬉しいことはございません🐟😊










女将のひとこと
価格のお話は、どうしても言い訳めいてしまいますので、気が進まないところもございます。
けれど、分からないまま高いものを買っていただくのは、本意ではございません。
鯛のかぶと煮が「食べるJAPAN 美味アワード2023」でグランプリをいただいたとき、審査委員長の服部幸應先生から「とてもよくできている」とお言葉をいただきました。
嬉しかったのは、見えない工程を、きちんと食べて評価してくださったことでございます。154品を、審査員の先生方が全部召し上がったうえでの評価でしたから。
地味な仕事にお金をかけている。それが当店の価格の中身でございます。そこに納得していただけたら、ありがたく思います🐟