瀬戸内海の食材カタログ!明石産以外のおすすめ海産物も紹介
こんにちは、明石めで鯛やの女将です🐟
瀬戸内海——穏やかな内海に、七百もの島々が浮かぶ、日本でいちばん大きな内海でございます。
この海の恵みは、本当に豊かでございます。明石の鯛とたこ、広島の牡蠣、下関のふぐ、愛媛の真鯛、大分の関あじ・関さば。どれも全国に名の知れた名産ばかり。
明石で商いをしておりますと、どうしても明石のことばかりお話ししてしまいますが、瀬戸内はぐるりと見渡してこそ面白いのでございます。
この記事では、瀬戸内海の食材を地域ごと・季節ごとにご紹介いたします。そして明石のりのお話と、今この海が抱えている課題についても、正直にお伝えさせてくださいませ😊
1. 瀬戸内海とは、どういう海でしょう
瀬戸内海は、本州・四国・九州に囲まれた内海でございます。
瀬戸内海の基本
- 日本最大の内海 東西およそ450キロにわたります
- 約700の島々 大小の島が点在する、世界でも珍しい景観です
- 水深が浅い 平均で40メートルほど。太陽の光が海底まで届きます
- 「瀬戸」が多い 島と島のあいだの狭い水路を「瀬戸」と申します。ここで潮が速くなります
- 日本初の国立公園のひとつ 1934年に瀬戸内海国立公園に指定されました
そして瀬戸内海には、有名な海峡がいくつもございます。
| 海峡 | 場所 | 特徴 |
|---|---|---|
| 明石海峡 | 明石市と淡路島のあいだ | 日本屈指の急潮。明石鯛・明石だこを育てます |
| 鳴門海峡 | 淡路島と徳島のあいだ | 渦潮で有名。鳴門鯛、鳴門わかめ |
| 来島海峡 | 愛媛・今治の沖 | 潮流が複雑。来島鯛が知られます |
| 関門海峡 | 下関と門司のあいだ | 瀬戸内海の西の出入り口 |
| 豊後水道 | 愛媛・大分のあいだ | 関あじ・関さばを育てます |
狭いところに、大量の海水が行き来する。これが瀬戸内の魚を美味しくしている仕組みでございます🐟
2. なぜ瀬戸内の魚は美味しいのか
瀬戸内の魚が美味しい五つの理由
- ① 速い潮 瀬戸の急流に逆らって泳ぐため、身が締まります
- ② 餌が豊富 エビ、カニ、イカナゴ、小魚。瀬戸内は「天然の生簀」とも呼ばれます
- ③ 浅い海 太陽の光が届くので、海藻やプランクトンがよく育ちます
- ④ 川からの栄養 周囲の川が、山の栄養を海へ運んできます
- ⑤ 漁場が近い 内海ですので、どの港からも漁場が近い。鮮度を保ちやすいのです
特に「浅くて、潮が速くて、餌が豊富」という組み合わせは、世界的に見ても珍しいものだそうでございます。
そして周囲には、京・大坂・広島・博多という消費地が並んでおります。よい魚が獲れて、それを食べる人が近くにいる。だから食文化が育ったのですね😊
3.【兵庫・明石】の食材
明石の名産
- 明石鯛 速い潮に揉まれた、身の締まった真鯛。「磯の女王」とも呼ばれます。江戸時代には将軍家への献上品でした
- 明石だこ 足が短く太いのが特徴。岩にしがみつくため筋肉が発達すると言われます。夏が旬
- 明石の焼き穴子 ふっくらとして、甘辛いタレが香ばしい。明石の食卓に欠かせません
- いかなご 春の風物詩。くぎ煮にして、ご近所やご親戚に配る文化がございます
- あかしのり 香り高い明石の海苔。知る人ぞ知る名産です
- 鰆(さわら) 「春を告げる魚」。関西では春が旬とされます
- タチウオ 夏から秋にかけて。上品な白身です
明石の特徴は「昼セリ」という仕組みでございます。
一般に魚のセリは早朝ですが、明石は漁場が港からごく近いため、朝獲って昼にセリにかけられるのです。しかも活きたまま。
さらに「活け越し」——セリで落とした魚を、港の海水を引き込んだ生簀で休ませる技もございます。漁で疲れた魚を回復させ、味を落ち着かせるのですね🐟
4.【兵庫・淡路島/播磨】の食材
淡路島
- 鱧(はも) 京都の夏を支えてきたのは、淡路や明石の鱧でございます
- 3年とらふぐ 通常より長く育てた、身の厚いとらふぐ
- しらす 春と秋。生しらす丼は絶品です
- 淡路島たまねぎ 海産物ではありませんが、外せません。甘みが際立ちます
- 海苔 淡路島も海苔の産地でございます
播磨(姫路・赤穂など)
- いかなご 播磨一帯の春の風物詩
- 穴子 姫路の穴子も名高いものです
- 赤穂の塩 古くからの塩の産地。よい塩がなければ、よい料理はできません
- 牡蠣 相生、赤穂など
赤穂の塩は、ぜひ覚えておいていただきたいものでございます。
料理の味を決めるのは塩加減。そして塩加減を決めるのは、塩そのものの質でございます。瀬戸内が食の宝庫なのは、よい塩が採れる土地でもあったからだと思っております😊
5.【岡山】の食材
岡山の名産
- ままかり 小魚の酢漬け。「ご飯が進みすぎて、隣の家に飯を借りに行く」から「まま(飯)借り」という名がついたと言われます
- サワラ 岡山では刺身で食べる文化がございます。これは全国的には珍しいことです
- 虫明(むしあげ)かき 岡山の牡蠣の名産地
- シャコ 瀬戸内のシャコは身が大きく、甘みがあります
- 黄ニラ 海産物ではありませんが、岡山の名物でございます
岡山で面白いのはサワラの刺身でございます。
サワラは足が早い魚で、多くの地域では焼いたり味噌漬けにしたりするもの。それを生で食べるというのは、鮮度に自信がある土地だからこそでございます。
「ままかり」という名前も愉快ですね。食べ物の名前に、暮らしの様子が残っている——こういう話が、女将は好きでございます🐟
6.【広島】の食材
広島の名産
- 牡蠣 全国有数の生産量を誇ります。広島といえば、まず牡蠣でございます
- 牡蠣の土手鍋 鍋の縁に味噌を塗り、溶かしながらいただく郷土料理
- 小イワシ 「七度洗えば鯛の味」と言われるほど。地元で愛されております
- あなご飯 宮島の名物。焼いた穴子をごはんの上に
- わけぎ 広島が全国一の産地。ぬたにしていただきます
- でべら(干しカレイ) 尾道の名物。炙っていただきます
「小イワシは七度洗えば鯛の味」——これは広島に伝わる言い回しでございます。
小イワシを丁寧に洗って、刺身でいただく。安い魚でも、手をかければご馳走になる。鯛が「美味しさの基準」として引き合いに出されているのも、鯛屋としては嬉しいところでございます😊
7.【山口】の食材
山口の名産
- ふぐ 下関といえば、ふぐでございます。地元では「ふく(福)」と呼びます
- てっさ・てっちり 薄造りと、ふぐ鍋。冬の最高のご馳走です
- あんこう 下関はあんこうの水揚げでも知られます
- うに 下関の雲丹加工は歴史がございます
- 甘鯛(あまだい) 上品な白身。若狭ものが有名ですが、山口でも
- 剣先イカ 透き通った身が美しく、甘みがあります
下関でふぐを「ふく」と呼ぶのは、「不遇」に通じるのを嫌い、「福」にかけたからだと言われます。
鯛が「めでたい」に通じるのと、同じ発想でございますね。日本人は本当に、言葉の響きを大事にしてまいりました🐟
8.【香川・徳島】の食材
香川
- いりこ(煮干し) 伊吹島のいりこは全国的に知られます。讃岐うどんの出汁を支えてまいりました
- オリーブハマチ・オリーブ牛 小豆島のオリーブを飼料に加えた、香川のブランド
- 鰆(さわら) 香川でも春の魚として親しまれます
- 讃岐うどん 言わずと知れた名物。いりこ出汁があってこそです
徳島
- 鳴門鯛 鳴門海峡の渦潮に揉まれた鯛。身の締まりは格別です
- 鳴門わかめ 肉厚で歯ごたえがあり、全国に知られます
- はも 徳島も鱧の産地でございます
- すだち お吸い物にも、焼き魚にも。これがあると味が締まります
香川のいりこは、ぜひお伝えしたいものでございます。
讃岐うどんの美味しさは、麺だけではございません。いりこ出汁があってこそなのです。
そして鳴門鯛。明石鯛と並び称される、瀬戸内の鯛の双璧でございます。渦潮の激流に揉まれて育つのですから、身が締まらないはずがございません😊
9.【愛媛】の食材|真鯛の本場です
さて、愛媛でございます。
当店の鯛は愛媛県産でございますので、ここは少し詳しくお話しさせてくださいませ。
愛媛の名産
- 真鯛 養殖真鯛の生産量は全国でも群を抜いております。日本の真鯛を支えている県と言ってよいほどです
- 来島鯛 来島海峡の激流で育った天然鯛
- じゃこ天 宇和島の名物。小魚をすり身にして揚げたもの
- ハマチ・ブリ 養殖の盛んな県でございます
- 真珠 宇和海は真珠の名産地でもあります
- 太刀魚・アジ・サバ 宇和海は魚の宝庫です
愛媛には、鯛めしが二つございます
松山・中予地方の鯛めし
鯛を一尾まるごとお米の上にのせて炊き込む。一般にイメージされる鯛めしはこちらでございます。
宇和島・南予地方の鯛めし
生の鯛の刺身を、卵を溶いた醤油だれに絡め、熱いごはんにかけていただく。もとは漁師めしだったと言われます。
同じ県の中に、まったく違う鯛めしが二つある。これは愛媛の面白いところでございます。
当店が愛媛の鯛を選んでいる理由は、脂のりがよいからでございます。
しゃぶしゃぶや煮物には、ほどよく脂がのっているほうが向きます。そして品質が安定しており、必要な量を確保できる。
「明石」という名は、明石の料亭で受け継がれてきた味づくりに由来する屋号でございまして、魚の産地ではございません。この点は、いつもはっきりお伝えしております🐟
10.【大分・福岡】の食材
大分
- 関あじ・関さば 豊後水道の速い潮で育った、日本屈指のブランド魚。一本釣りで、傷つけずに釣り上げます
- 城下(しろした)かれい 日出町の名物。殿さまに献上されたと伝えられます
- ひらめ 大分もひらめの名産地です
- かぼす 焼き魚に搾ると、味が一段上がります
福岡(周防灘)
- 豊前海一粒かき 大粒で身の厚い牡蠣
- わたりがに 身が甘く、味噌も濃厚です
関あじ・関さばは、ブランド魚の代表格でございます。
豊後水道の速い潮に揉まれて身が締まり、しかも一本釣りで一尾ずつ丁寧に扱われる。網で獲ると魚が傷つきますが、一本釣りならそれがございません。
獲り方まで含めてブランド——これは明石の「活け越し」とも通じる考え方でございますね😊
11.【季節別】瀬戸内の旬カレンダー
| 季節 | 旬の食材 |
|---|---|
| 春 3〜5月 |
桜鯛、いかなご、鰆、しらす、わかめ、メバル、アサリ、サヨリ |
| 夏 6〜8月 |
明石だこ、鱧、穴子、タチウオ、イサキ、スズキ、剣先イカ、岩牡蠣 |
| 秋 9〜11月 |
紅葉鯛、サワラ、カマス、太刀魚、ままかり、わたりがに |
| 冬 12〜2月 |
寒鯛、ふぐ、牡蠣、のり、ひらめ、あんこう、寒ブリ、ナマコ |
鯛は春(桜鯛)と秋(紅葉鯛)の二度の旬がございますので、カレンダーに二度登場いたします。
春は姿の美しさ、秋は味の深さ。同じ魚なのに、季節で呼び名まで変わるというのは、鯛ならではのことでございます🐟
12. 明石のりのこと|「古くなった海苔を活かせないか」
さて、明石のお話に戻りまして。
明石は、海苔の名産地でもございます。
鯛やたこの陰に隠れがちですが、兵庫県は全国有数の海苔の産地。そしてあかしのりは、香りの高さと味の濃さで知られております。
明石の海苔が美味しい理由
- 栄養豊かな海で育つ 川から流れ込む栄養と、速い潮が運ぶ養分
- 適度な干満差 潮の満ち引きで海苔が空気に触れることが、旨みを育てます
- 冬が旬 寒い時期に育った海苔は、香りも味も濃くなります
- 丁寧な摘み取り 「一番摘み」のものは特にやわらかく、香りが立ちます
実はこの明石のりについて、私どもがお手伝いをさせていただいたことがございます。
明石観光協会さまからのご依頼
いただいたご相談は、こういうものでした。
「古くなった明石海苔を、なんとか活用できないか」
海苔は、時間が経つと香りが飛び、色も落ちてまいります。味が悪くなるわけではないのですが、商品としての価値は下がってしまう。
よい海苔が、ただ古くなったというだけで行き場を失ってしまう——これはもったいないことでございます。
そこで、あかしのりを使ったメニューを開発させていただきました。



そしてありがたいことに、この取り組みを関西の食の専門誌『あまから手帖』に取り上げていただきました。
明石といえば鯛とたこ。海苔はどうしても、その陰に隠れてしまいます。
けれどあかしのりは本当によいものでございます。香りが違うのです。地元の食材に光を当てる——そういう仕事ができたのは、嬉しいことでございました。
海苔は、和食の出汁文化とも深くつながっております。鯛めしに刻み海苔を散らす。お茶漬けに海苔を。おにぎりを海苔で巻く。海苔があるだけで、ごはんが一段美味しくなる——これは日本人の共通の感覚だと思います😊
13. 今、瀬戸内の海が抱えていること
明るい話ばかりしてまいりましたが、最後に正直なお話をさせてくださいませ。
瀬戸内海の漁獲量は、近年たいへん減っております。
指摘されている課題
- 海の栄養の減少 海水中の栄養が減ってプランクトンが育ちにくくなっているのではないか、という指摘がございます。かつての水質汚濁対策が進んだ結果、今度は「きれいすぎる海」になったとも言われます
- 海苔の「色落ち」 栄養不足の影響で、海苔の色が薄くなり、味も落ちるという現象が各地で報告されております。これは深刻な問題でございます
- 海水温の上昇 魚の生息域や産卵時期が変わってきていると言われます
- 漁業者の減少と高齢化
※原因については、現在も研究と議論が続いております。
結果として、明石鯛も、明石だこも、明石の焼き穴子も、たいへん獲れなくなっております。
明石の人でさえ、明石の魚を食べる機会が減ってしまいました。地元の者として、これは本当に寂しいことでございます。
海のことは、人の手ではどうにもならない部分がございます。けれど、だからこそ——
獲れたものを大切に、余さず使いたい。
鯛の頭も、あらも、骨も。古くなった海苔も。使いようがあるものを、捨てない。それが、作り手にできる数少ないことではないかと思っております🐟
一尾を余さず|当店のお品
- 鯛のかぶと煮 鯛の頭をじっくり煮込みます。美味アワード2023グランプリをいただいたお品です
- 鯛の食べ比べセット かぶと煮・鯛めし・昆布〆が一箱に。一尾のいろいろな部分を味わえます
- 幸せの鯛しゃぶセット 締めの雑炊で、お出汁まで余さず
- 鯛かぶと飯セット(会員さま限定) 頭から引いた出汁で炊き上げます
14. まとめ
瀬戸内海の食材・地域別まとめ
- 明石 明石鯛、明石だこ、焼き穴子、いかなご、あかしのり
- 淡路・播磨 鱧、3年とらふぐ、しらす、赤穂の塩
- 岡山 ままかり、サワラの刺身、虫明かき
- 広島 牡蠣、小イワシ、あなご飯、わけぎ
- 山口 ふぐ(ふく)、うに、剣先イカ
- 香川・徳島 いりこ、オリーブハマチ、鳴門鯛、鳴門わかめ
- 愛媛 真鯛の一大産地。じゃこ天、二種類の鯛めし
- 大分・福岡 関あじ・関さば、城下かれい、豊前海一粒かき
覚えておきたいこと
- 瀬戸内が豊かなのは速い潮・豊富な餌・浅い海・川の栄養・近い漁場のおかげ
- 鯛は春(桜鯛)と秋(紅葉鯛)の二度の旬があります
- 明石は海苔も名産。あかしのりは香りが違います
- 明石観光協会さまのご依頼で、古くなった明石海苔を活かすメニューを開発し、『あまから手帖』に掲載いただきました
- 一方で瀬戸内の漁獲量は減少。海苔の色落ちも深刻な問題です
- 当店の鯛は愛媛県産。「明石」は料亭の味づくりに由来する屋号です
瀬戸内海は、ぐるりと見渡すと本当に豊かな海でございます。
明石の鯛、広島の牡蠣、下関のふぐ、愛媛の真鯛、大分の関あじ。どこを切り取っても名産があり、それぞれに料理の文化が育っている。
けれどその豊かさは、当たり前のものではなくなってきている——そのことも、知っておいていただけたら嬉しく思います。
だからこそ、いただくときは、余さず、ありがたく。それがいちばんの恩返しなのではないかと思っております🐟😊










女将のひとこと
このご依頼をいただいたときは、嬉しゅうございました。
「捨てるには惜しい」——そう思ってくださる方がいて、そこに相談を持ちかけてくださった。それだけでありがたいことでございます。
古くなった海苔は、香りが飛んでしまいます。けれど火を入れたり、ほかの味と合わせたりすれば、十分に美味しくいただけるのです。生のままでは物足りなくても、料理にすれば生きる。
これは、鯛の仕事と同じだと思いました。
鯛も、身だけを使って頭を捨てていては、もったいない。頭も、あらも、骨も、使いようがある。そう思って、かぶと煮や潮汁が生まれたのですから。
日本には「もったいない」という言葉がございます。一尾を余さず食べる文化も、古い海苔を活かす工夫も、根っこは同じでございますね🐟