日本のおもてなしとは?食でつなぐ人と人の絆と贈り物の関係
こんにちは、明石めで鯛やの女将です🐟
「おもてなし」という言葉が、すっかり有名になりました。けれど改めて「おもてなしって何ですか」と聞かれると、答えに詰まってしまうのではないでしょうか。
親切にすること? 丁寧に接すること? ——もちろんそれもあるのですが、日本のおもてなしにはもう少し変わった特徴がございます。
それは、「相手に気づかれなくてもいい」という考え方です。
褒められたいわけでも、感謝されたいわけでもない。ただ、その人に気持ちよく過ごしてほしい。だから気づかれなくても構わない——。
この記事では、おもてなしという考え方の奥行きと、なぜその中心に「食」があるのかをお話しいたします😊
1.「おもてなし」という言葉について
「おもてなし」は、「もてなす」に丁寧の「お」がついた言葉でございます。
もとをたどると「持て成す」。「持って」「成し遂げる」——つまり心を持って、相手のために何かを成し遂げるということです。
よく「表裏がないから『表なし』でおもてなし」という説明を見かけますが、これは言葉遊びとして語られるもので、本来の成り立ちは「持て成す」のほうでございます。
もっとも、「裏表のない心で」という解釈そのものは、おもてなしの本質をよく言い表していると思います。誰が見ていなくても同じように整える——これはまさに、裏表のない仕事ですから🐟
2. サービスとおもてなしは、どう違うのでしょう
よく比べられるのが「サービス」と「ホスピタリティ」です。似ているようで、実は出どころがまったく違います。
| サービス | ホスピタリティ | おもてなし | |
|---|---|---|---|
| 語源 | ラテン語の「servus(奴隷)」 | ラテン語の「hospes(客人を迎える人)」 | 「持て成す」 |
| 関係 | 主と従。提供する側とされる側 | 対等。もてなし合う関係 | 主客一体。亭主と客で場を作る |
| 対価 | 対価に見合った行為 | 対価を超えることも | 対価を前提としない |
| 特徴 | 均一・確実・マニュアル化できる | 相手に合わせた柔軟な対応 | 気づかれなくてもよい |
サービスが悪いという話ではございません。誰が受けても同じ品質というのは、たいへんな価値です。コンビニでもホテルでも、日本のサービスの水準は世界でも際立っております。
ただ、おもてなしは少し性質が違うのです。
相手を見て、その人のためだけに考える。そして、それを相手に悟らせない。
ここがいちばん変わっているところだと思います。ふつう、気づいてもらわなければ意味がないはずですから😊
3. 茶の湯に学ぶ|一期一会という考え方
おもてなしの考え方がもっとも深く磨かれたのが、茶の湯の世界でございます。
よく知られた言葉が「一期一会(いちごいちえ)」。
一期一会とは
「この出会いは、生涯にただ一度のもの」という意味です。
たとえ同じ人と何度も会っていても、まったく同じ時間は二度とない。だから今日のこの一席を、一生に一度のつもりで臨む——という心構えでございます。
茶席の主は、その日のために道具を選び、花を生け、掛軸を掛け、お菓子を用意します。二度と同じ組み合わせはない。それが一期一会ということです。
この考え方の面白いところは、「おもてなしする側のほうが真剣になる」ことです。
お客さまは「今日はいい席だったな」で終わるかもしれません。けれど迎える側は、何日も前から準備をしている。その非対称さを、当然のこととして受け入れる。
見返りを求めないというのは、こういうことなのでしょうね🐟
4. 利休七則|四百年前のおもてなしの心得
千利休が残したとされる「利休七則」という教えがございます。おもてなしの心得として、今でもよく引かれるものです。
読んでみますと、驚くほど当たり前のことが書いてあります。
利休七則
- 茶は服のよきように点て お茶は、飲む人にちょうどよい加減に
- 炭は湯の沸くように置き 炭は、湯がきちんと沸くように置く
- 夏は涼しく冬は暖かに 季節に応じて、快適に過ごせるように
- 花は野にあるように 花は、野に咲いているように自然に生ける
- 刻限は早めに 時間には余裕をもって
- 降らずとも雨の用意 降っていなくても、傘の用意をしておく
- 相客に心せよ 同席の客にも心を配る
弟子がこれを聞いて「そんなことは誰でも知っています」と言ったところ、利休は「それができたら、あなたの弟子になりましょう」と答えた——という逸話が伝わっております。
おもてなしとは、特別なことをすることではない。当たり前のことを、相手のために、ちゃんとやる。それだけのことが、いちばん難しいのだという教えですね。
七則を、今の暮らしに置き換えてみると
- 茶は服のよきように → 相手の好みや体調に合わせたものを出す
- 炭は湯の沸くように → 段取りをきちんと組んでおく
- 夏は涼しく冬は暖かに → 部屋の温度、座り心地に気を配る
- 花は野にあるように → 作り込みすぎない。自然であること
- 刻限は早めに → 準備は早めに終わらせて、余裕を持って迎える
- 降らずとも雨の用意 → もしもの備えをしておく
- 相客に心せよ → 主役だけでなく、同席した方にも心を配る
四百年以上前の教えが、そのまま今日のおもてなしに使える。これは驚くべきことだと思います😊
5.「気づかれなくてもいい」という美学
日本のおもてなしでいちばん独特なのが、「気づかれなくてもいい」という考え方でございます。
気づかれないおもてなしの例
- 料亭が、その日の客に合わせて掛軸を替える お客さまが気づくかどうかは分かりません。それでも替えます
- お客さまの苦手なものを、黙って献立から外す 「お嫌いと伺ったので外しました」とは言いません
- 玄関を掃き清めておく お客さまが「きれいだな」と思わなくても、構わないのです
- 茶室の露地に、水を打っておく 涼しげに見えるため。気づかれなくても打ちます
- 器の向きを、相手が取りやすい方向に置く 言われなければ誰も気づきません
なぜ、気づかれなくてもよいのでしょう。
おそらく、気づかせてしまうと相手に「気を使わせる」からだと思うのです。
「あなたのためにこれだけしました」と伝えてしまえば、相手は感謝しなければなりません。それは、ある種の負担です。
おもてなしの目的は「相手が気持ちよく過ごすこと」ですから、感謝を求めた時点で、少しずれてしまう。だから黙って整える。
——なんとも回りくどくて、なんとも日本的な話ですね。けれど私は、この考え方が好きでございます🐟
6. 日本の家庭に残るおもてなしのかたち
茶の湯や料亭の話だけではございません。日本のご家庭にも、おもてなしの形は残っております。
家庭のおもてなし
- 玄関を掃除しておく お客さまが最初に見る場所です
- スリッパを揃えて出す 向きを相手のほうへ
- お茶とお茶請けを出す 「まずは一服」という間が、場をほぐします
- 上座にご案内する 床の間の前、入口から遠い席が上座です
- 器を少しよいものにする お客さま用の器を出すこと自体が、歓迎の表現です
- 見送りは、姿が見えなくなるまで これがいちばん印象に残るところです
- 手土産をいただいたら、その場で感謝を できればその日のうちにお礼の連絡も
特に「見送り」は大事だと思っております。
車が見えなくなるまで、角を曲がるまで手を振る。お客さまが振り返ったときに、まだこちらが立っている。それだけで「また来たいな」と思っていただけるものです。
迎えるときの準備は目に見えますが、見送りは最後の印象を決めます。ここを丁寧にされる方は、やはり心に残りますね😊
7. なぜ「食」がおもてなしの中心なのでしょう
日本のおもてなしは、たいてい食べ物とともにございます。
お客さまが来ればお茶を出し、お菓子を出し、食事を用意する。茶の湯でも、濃茶の前に懐石が出されます。
なぜでしょうか。
食がおもてなしの中心にある理由
- 相手の体に入るもの 身につける物や見る物と違い、食べ物は相手の体の一部になります。だからこそ、もっとも心を込める対象になりました
- 手間が目に見える 料理には時間がかかります。その時間が、そのまま気持ちの表れになります
- 同じものを分け合える 「同じ釜の飯を食う」という言葉のとおり、食を共にすることは関係を作る行為でした
- 季節を表現できる 旬のものを出すことで、「今」を共有できます
- 会話が生まれる 「美味しいですね」から始まる会話が、場をほぐします
- 神様と分かち合う文化 お供えしたものを下げていただく「直会」の考え方。食は神事とも結びついていました
そして、もうひとつ。
食べ物は、残らない。
物を贈れば、相手は置き場所に困るかもしれません。けれど食べ物は、美味しくいただいてしまえばそこで完結します。心に残って、物は残らない。
相手に負担をかけないという意味で、これほどおもてなしに向いたものはないのですね🐟
8. 贈り物は「離れた相手へのおもてなし」
ここで、贈り物の話につながります。
日本の贈答文化——お中元、お歳暮、手土産、内祝い、お礼。これらは「会えない相手へのおもてなし」だと考えると、すっきり理解できます。
贈り物に表れるおもてなしの心
- 相手の好みを考えて選ぶ 茶席で道具を選ぶのと同じことです
- 季節のものを贈る 「今」を共有するという意味で
- のしや包みを整える 中身だけでなく、見た目も整える。これは器を選ぶのと同じ感覚です
- 届く日を考える 相手のご都合のよい日に。「刻限は早めに」ですね
- 高価すぎないものを選ぶ 相手に気を使わせない。これが大事なところです
- 一筆添える 言葉がなければ、気持ちは半分しか伝わりません
特に「高価すぎないものを選ぶ」というのが、日本的だと思います。
贈り物は、高ければよいというものではございません。高すぎると相手が「お返しを」と考えてしまい、おもてなしが新しい負担を生んでしまうからです。
相手が気持ちよく受け取れること。これが贈り物の基準でございます。おもてなしの考え方と、まったく同じですね。
明石めで鯛やでは、のし・オリジナルメッセージカードを無料でご用意しております。言葉を添えることこそが、いちばんのおもてなしだと思っておりますので😊
9. 現代のおもてなし|完璧を目指さないこと
ここまで立派なことを書いてまいりましたが、正直なお話もしておきましょう。
現代の暮らしで、茶の湯のようなおもてなしは難しゅうございます。共働きで、子育てがあって、時間もない。
完璧を目指すと、おもてなしそのものをやめてしまいます。
無理をしないおもてなしのコツ
- 品数を減らして、一品を良くする たくさん作るより、ひとつ印象に残るものを
- お取り寄せを使う 恥ずかしいことではございません。作ることが目的ではなく、楽しんでもらうことが目的ですから
- 前日までに準備を終える 「刻限は早めに」。当日ばたばたするのがいちばんよくありません
- 作る人が座っていられる料理にする これがいちばん大事かもしれません
- 片付けは後回しにする お客さまがいる間は、座っていてください
- 「ごめんね、手抜きで」と言わない これを言われると、相手が気まずくなります。黙って出すのが作法です
特に最後のひとつは、大事なところです。
謙遜のつもりで「たいしたものがなくて」「手抜きで申し訳ない」と言ってしまいがちですが、言われた側は気を使います。
堂々と出してくださいませ。それが相手をいちばん楽にします🐟
10. 明石めで鯛やが大切にしていること
最後に、私どものお話をさせてくださいませ。
私どもの飲食部門である「ぜんさく」では、長いあいだおもてなしをとても大切にしてまいりました。
お客さまをお迎えし、お席にご案内し、お料理をお出しし、お見送りする。目の前にお客さまがいらっしゃるからこそできることが、飲食店にはたくさんございます。
ですから、明石めで鯛やを立ち上げたときに、私どもはひとつ決めたことがございました。
おもてなしも一緒に乗せて、お客さまへ商品をお届けしよう。
通販だからこそ、難しいこと
- お客さまのお顔が見えない どんな方が、どんな場面で召し上がるのか
- お出しする瞬間に立ち会えない 箱を開けていただく場に、こちらはおりません
- その場で手直しができない お店なら「熱いのをお持ちしますね」と言えますが、通販ではできません
- お見送りができない 「ありがとうございました」を直接申し上げられません
できないことを数えれば、きりがございません。
けれど、だからこそ「できることは全部やろう」と考えました。
ご注文をいただくところから、お品を作るところ、そして梱包まで。各所に、明石めで鯛やなりのこだわりを取り入れております。
ひとつひとつは、本当に小さなことでございます。声を大にして言うようなものでもありません。
けれど、気づいてくださるお客さまがいらっしゃるのです。
「こういうところまで考えてくれているんですね」とお言葉をいただいたとき。箱を開けたときの写真を送ってくださったとき。——そういうとき、スタッフと一緒に嬉しく思う時間が、本当に多々ございます。
そしてもうひとつ、私自身の経験からお話ししたいことがございます。
私も自宅でのおもてなしが好きなほうで、人をお招きすることがよくあります。
けれど、そのたびに引っかかっていたことがございました。
作る人が、席にいない。
せっかく人が集まっているのに、自分だけ台所に立っている。料理を運んでは戻り、また運んでは戻り。気づけば、みんなが笑っている話が聞こえていない。
お客さまも、たぶん気にしておられるのです。「座ってください」「手伝いましょうか」と何度も言ってくださる。作る人が立ちっぱなしだと、お客さまもくつろげないのですね。
そんな経験から生まれたのが、幸せの鯛しゃぶセットでございます。
コンセプトは【お母さんが席を立たなくていい】。
鍋ひとつで食卓が完成しますので、作る人もずっと席にいられます。全員が同じお鍋をのぞき込んで、「もういいかな」「まだ早い」と言い合う。もてなす人ともてなされる人に分かれない——これが、私の考えるいちばんのおもてなしでございます。
おもてなしの食卓に
- 幸せの鯛しゃぶセット 【お母さんが席を立たなくていい】。鍋ひとつで食卓が完成します
- 鯛の食べ比べセット かぶと煮・鯛めし・昆布〆が一箱に。ある意味「鯛のフルコース」でございます
- 鯛のかぶと煮 電子レンジで温めるだけ。器に移せば、それだけで食卓の主役に
- 鯛めしセット 炊飯器にセットするだけ。炊き上がりの湯気が、何よりのもてなしになります
※実際に召し上がった方のご感想は、おとりよせネットの明石めで鯛やのページでもご覧いただけます。
11. まとめ
この記事のポイント
- 「おもてなし」は「持て成す」=心を持って相手のために成し遂げること
- サービスは主従・対価が前提。おもてなしは対価を前提とせず、気づかれなくてもよい
- 茶の湯の一期一会——この出会いは生涯に一度。だから今日の一席に全力を注ぐ
- 利休七則は当たり前のことばかり。だからこそ難しいという教えです
- 気づかれなくてよいのは、気づかせると相手に気を使わせてしまうから
- 家庭のおもてなしでは見送りが最後の印象を決めます
- 食がおもてなしの中心なのは、体に入り、手間が見え、分け合え、そして残らないから
- 贈り物は「会えない相手へのおもてなし」。高すぎないものを、一筆添えて
- 現代は完璧を目指さないこと。「手抜きでごめんね」と言わないのが作法です
- 明石めで鯛やは「おもてなしも一緒に乗せてお届けする」と決めて始まりました。受注から製造、梱包まで、各所に私どもなりのこだわりを
- いちばんのおもてなしは相手が気楽でいられること。作る人も座っていられる食卓を
おもてなしとは、尽くすことではなく「その人に、気持ちよく過ごしてほしい」と願うことなのだと思います。
だから立派である必要はありません。玄関を掃いておく、お茶を一杯出す、見えなくなるまで見送る。それだけで、おもてなしは成り立ちます。
そして食卓を囲むときは、どうぞ作る方もご一緒に。全員が同じ鍋をのぞき込んでいる食卓——それが、いちばん幸せなかたちだと思っております🐟😊










女将のひとこと
気づかれなくてもいい、と申し上げた舌の根も乾かぬうちになんですが——やはり気づいていただけると、嬉しいものでございます😊
スタッフにお客さまのお声を伝えると、みんな本当に喜びます。見えないところまで手をかけるというのは、正直なところ手間がかかります。それでも続けられるのは、こういう瞬間があるからなのですね。
だから、気づかれることを期待はしないけれど、気づいていただけたら素直に嬉しい。そのくらいがちょうどよいのかもしれません🐟