旬の食材を大切にする日本食の考え方!四季ごとの美味しい魚介

旬の食材を大切にする日本食の考え方!四季ごとの美味しい魚介

こんにちは、明石めで鯛やの女将です🐟
「旬のものを食べなさい」——子どもの頃に、祖母や母から言われた覚えのある方も多いのではないでしょうか。
今はスーパーに行けば、一年中たいていのものが手に入ります。それでも日本人は「旬」という言葉を手放しませんでした。なぜでしょう。
実は旬という考え方は、「美味しい時期」という意味だけではございません。日本料理には「走り・盛り・名残」という、旬をさらに三つに分ける繊細な見方がございます。
そして鯛には、一年に二度の旬があることをご存じでしょうか。
この記事では、旬という考え方の奥行きと、四季それぞれの美味しい魚介をご紹介いたします😊

目次

1. 「旬」とは、そもそも何でしょう

「旬」という字は、もともと十日間を表す言葉でした。上旬・中旬・下旬の「旬」でございます。

それが転じて、食材がもっとも美味しい、ごく限られた時期を指すようになりました。

たった十日という字が使われているところに、日本人の感覚が表れているように思います。旬とは、あっという間に過ぎてしまうものなのですね。

旬のものを食べるよいところ

  • いちばん美味しい 脂がのる、身が締まる、甘みが増す。味が最高の状態です
  • 値段が下がる たくさん獲れる時期ですので、良いものが手頃に手に入ります
  • 栄養が豊か 魚が栄養を蓄える時期と旬は、だいたい重なります
  • 季節を感じられる これがいちばん大きいかもしれません。食卓に季節が来る、という豊かさです
  • 体が求めるものと合う 夏に水分の多いもの、冬に脂ののったもの。自然とそうなっています

女将のひとこと

私は30代後半に思わぬ病気をして、手術と入院を経験いたしました。それ以来、食と健康について考えるようになり、日々の生活にも取り入れております。
最近は、お魚、お肉、野菜のバランスを考えて献立を組むようにしておりまして。そうすると体が元気だなと感じますし、何かが不足していると体が求めている感じも分かるようになりました。
旬のものというのは、まさに体が求めているものなのかもしれませんね。難しい栄養学を知らなくても、昔の人が旬を大事にしたのは、体で分かっていたからだと思うのです🐟

2. 走り・盛り・名残|旬を三つに分ける考え方

日本料理には、旬をさらに三つに分ける見方がございます。茶の湯の世界から来た考え方です。

① 走り(はしり)

その季節に出はじめのもの。まだ出盛りではなく、味も若い。けれど「来たよ」という喜びがあります。

値段は高く、量も少ない。それでも、季節の訪れを告げる役割があるのです。

② 盛り(さかり)

いちばん出回り、いちばん美味しい時期。一般に「旬」と呼ばれるのはここです。

味がのり、量も多く、値段も落ち着く。堂々と主役を張れる時期でございます。

③ 名残(なごり)

季節の終わりかけ。もう最盛期は過ぎています。

けれど日本料理では、この名残をとても大事にいたします。「今年はこれで見納め」という、惜しむ気持ちごと味わうのです。

面白いのは、「盛り」だけを良しとしないところです。

いちばん美味しい時期だけを選ぶのではなく、出はじめの初々しさも、終わりかけの寂しさも、それぞれに味わう。味だけでなく、季節の流れそのものを食べているような感覚でございます。

料亭の献立には、走りのものと名残のものを一緒に出すことがございます。季節の移り変わりを、一つのお膳の上で表現するわけですね。なんとも凝ったことをいたします😊

3. 初物を尊ぶという、不思議な文化

日本には「初物(はつもの)」を特別に喜ぶ習慣がございます。

初鰹、初鮭、新米、新茶、初物の筍。その年に初めて口にするものには、特別な価値があるとされてきました。

初物にまつわる言い伝え

  • 「初物を食べると七十五日長生きする」 初物には生命力が宿るという考えから
  • 東を向いて笑って食べる 縁起をかつぐ食べ方として伝わる地域もございます
  • 「女房を質に入れても初鰹」 江戸っ子の見栄を表す言い回し。初鰹は目が飛び出るほど高価でした

江戸時代、初鰹の熱狂ぶりは相当なものだったそうです。「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」という句が詠まれるほど、初夏を告げる風物詩でございました。

冷静に考えますと、初鰹より秋の戻り鰹のほうが脂がのって美味しい。それなのに、江戸っ子は高いお金を払って初鰹を買った。

味ではなく「いちばん早く季節を迎える」ことに価値を見出した——これが日本人の旬への感覚なのですね🐟

4.【春】芽吹きの海の魚介

魚介 旬の特徴
鯛(桜鯛) 産卵前で栄養を蓄え、体が桜色に。春を代表する魚です
鰆(さわら) 字のとおり「春を告げる魚」。関西では春、関東では冬が旬とも
イカナゴ 瀬戸内の春の風物詩。釘煮にして春を告げます
ホタルイカ 富山湾などで。小さな体に濃厚な旨み
初鰹 さっぱりとした身。江戸っ子が熱狂した初夏の味
メバル 「春告魚」とも呼ばれます
サヨリ 細く美しい姿。上品な白身です
アサリ 産卵前で身が太る時期。潮干狩りの季節です
ワカメ 春が最盛期。生わかめの歯ごたえは季節のもの

瀬戸内の春といえば、イカナゴの釘煮でございます。解禁の日になると、この地域はどこの家からも甘辛い匂いが漂ってまいります。

ご近所同士で配り合い、遠方のご親戚に送る。春が来たことを知らせる贈り物でもあるのですね。こういう文化が残っているのは、ありがたいことだと思います😊

5.【夏】暑さを乗り切る魚介

魚介 旬の特徴
鱧(はも) 京都の夏の顔。骨切りという特別な技が要ります
鮎 川魚の王様。塩焼きで、わたの苦みごと
穴子 夏に脂がのります。ふわりと煮上げて
タコ 夏が旬。関西では半夏生にタコを食べる習わしがあります
イサキ 梅雨どきに脂がのる白身
スズキ 夏の代表的な白身。洗いにすると涼やかです
岩牡蠣 冬の真牡蠣とは別物。夏が旬の牡蠣です
ウニ 夏が最盛期。濃厚な甘みがのります

関西には半夏生(はんげしょう)という節目がございます。夏至から十一日目ごろ、七月の初めです。

この日にタコを食べるという習わしがございまして、理由は「稲の根がタコの足のようにしっかり張りますように」という願いからだそうです。

食べ物に願いを込める——やはりここでも出てまいりますね🐟

6.【秋】実りの季節の魚介

魚介 旬の特徴
鯛(紅葉鯛) 産卵の疲れから回復し、脂がのる時期。秋の鯛は格別です
秋刀魚 秋の代表。脂ののった塩焼きに大根おろし
戻り鰹 春の初鰹とは別物の、脂ののった濃厚な味
鮭 産卵のために戻る季節。石狩鍋やちゃんちゃん焼きに
サバ 秋サバは脂がのります。「秋サバは嫁に食わすな」とも
イワシ 秋に脂がのる。手軽で滋味深い魚です
カマス 「カマスの焼き食い一升飯」と言われるほどご飯が進みます
カツオ・ブリの若魚 これから冬にかけて太っていきます

秋は新米の季節でもございます。

炊きたての新米は水分をたっぷり含んで、つやつやと輝きます。そこに魚の出汁が染みると、ごはん一粒一粒が旨みをまとって、香りまで変わってくるのです。

鯛めしがいちばん美味しいのも、この季節でございます。新米と鯛の出汁の相性は、本当に格別でございますよ😊

7.【冬】脂がのる季節の魚介

魚介 旬の特徴
鯛(寒鯛) 冬の鯛も身が締まって美味。お正月の祝い膳に欠かせません
鰤(ぶり) 寒鰤は脂の乗りが最高。出世魚として年取り魚にも
鱈(たら) 鍋の主役。白子も冬ならでは
牡蠣 真牡蠣は冬が旬。土手鍋、焼き牡蠣、フライに
アンコウ 茨城のあんこう鍋。肝は「海のフォアグラ」とも
ヒラメ 寒ビラメ。薄造りで上品に
フグ 冬の高級魚。てっちり、てっさで
ズワイガニ 冬の味覚の王様
ナマコ 酢の物でこりこりと。冬の珍味です

冬の魚が美味しいのは、寒さに備えて脂を蓄えるからです。理屈は単純ですが、だからこそ確実でございます。

そして冬は、鍋の季節。魚から出る出汁が、そのまま鍋の味になります。日本の冬の食卓は、魚でできていると言ってもよいかもしれませんね🐟

8. 鯛には一年に二度の旬があります

さて、ここが本題でございます。

多くの魚は旬が年に一度ですが、鯛には二度の旬がございます。しかもそれぞれに、美しい名前がついているのです。

桜鯛(さくらだい)|春

産卵を控えた春の鯛です。栄養をたっぷり蓄え、体が桜のような淡い紅色に染まります。

ちょうど桜の咲く頃に浅場へやってくることから、この名がつきました。一年でもっとも姿が美しい時期とされ、祝いの膳にはこの時期の鯛が珍重されてきました。

麦わら鯛(むぎわらだい)|初夏

産卵を終えた直後の鯛です。体力を使い果たして痩せており、残念ながら味は落ちます。

麦の収穫期にあたることから、この名がつきました。「この時期の鯛は避ける」という知恵が、名前として残っているわけですね。

紅葉鯛(もみじだい)|秋

産卵の疲れから回復し、再び脂がのってくる秋の鯛です。紅葉の季節にあたることから、この名がつきました。

味の面では、この紅葉鯛をいちばんに推す方も多くいらっしゃいます。身の甘みと脂のバランスが、たいへんよいのです。

寒鯛(かんだい)|冬

冬の鯛も、身が締まって美味しゅうございます。そしてお正月の祝い膳には、やはり鯛が欠かせません。

春は姿の美しさ、秋は味の深さ。

同じ魚なのに、季節によって呼び名まで変えてしまう。日本人がどれほど鯛を見つめてきたかが、この名前たちに表れていると思います。

しかも「麦わら鯛」のように、美味しくない時期にまで名前をつけているのです。褒めるばかりでなく、正直に記録する。こういうところが面白いですね😊

女将のひとこと

桜鯛、麦わら鯛、紅葉鯛、寒鯛。
この名前を知ってから、鯛を見る目が変わりました。「今はどの鯛なのかな」と、つい考えてしまうのです。
明石めで鯛やでは脂のりのよい愛媛の鯛を使っておりますが、やはり季節によって表情が違います。同じ魚なのに、不思議なものでございます。
季節のことを知っていると、食べることが少し面白くなる。旬を大事にする文化というのは、そういうことなのかもしれませんね🐟

9. 養殖と流通が変えた「旬」

正直なお話もしておきましょう。

現代は、養殖技術と流通の発達によって一年中たいていの魚が手に入ります。鯛もそのひとつです。

これを「旬がなくなった」と嘆く声もございます。けれど私は、そう単純な話でもないと思っております。

現代の「旬」をどう考えるか

  • いつでも食べられるのは、ありがたいこと お祝い事は季節を選びません。お食い初めも、長寿のお祝いも、いつ巡ってくるか分かりません。そのときに鯛が手に入るのは、幸せなことです
  • 養殖には養殖のよさがある 身質が安定し、安心して食卓に出せます。価格も落ち着きます
  • 旬は「味の目安」から「季節を感じる手がかり」へ いつでも買えるからこそ、あえて旬を意識する。その楽しみ方もあると思います
  • 知っていることに意味がある 桜鯛、紅葉鯛という言葉を知っていれば、春と秋の食卓が少し豊かになります

旬という言葉は、「いつが美味しいか」という情報であると同時に、「季節を感じるための物差し」でもございます。

一年中手に入る時代だからこそ、後者の価値が増しているのではないでしょうか🐟

10. 旬を感じるための、小さな工夫

毎日の食卓に、少しだけ季節を入れてみませんか。難しいことは何もございません。

① 薬味を季節で変える

春は木の芽、夏は茗荷と大葉、秋は柚子、冬は柚子と七味。ひとつまみ変えるだけで、季節が食卓に来ます。

② 器を替える

夏はガラス、冬は土物。器を替えるだけで、同じ料理が違って見えます。料亭が季節で器を替えるのは、このためです。

③ スーパーで「安いもの」を見る

旬のものは、たくさん獲れるので安くなります。値札がいちばん正直な旬の案内でございます。

④ 一品だけ季節のものを入れる

全部そろえなくて構いません。一品あれば十分です。春なら筍をひとつ、秋ならきのこをひとつ。

⑤ 年中行事を少しだけ守る

七草粥、恵方巻、ちらし寿司、月見団子、年越しそば。全部でなくていいのです。できるものだけ。

⑥ 「今が旬なんだよ」と口に出す

お子さまに話してみてください。これが受け継ぐということです。学校では習いませんから。

明石めで鯛やのお品は、下ごしらえを済ませてお届けしております。

お魚は下ごしらえが面倒で、どうしても食卓から遠のきがちです。そこをこちらで引き受けることで、「季節に鯛を食べる」ということが続いてくれたらと願っております。

季節ごとの楽しみ方

  • 春 桜鯛の季節に、鯛の昆布〆を。鯛と昆布とお塩だけの、春らしく澄んだ一品です
  • 夏 さっぱりと。昆布〆にオリーブオイルをかけてカルパッチョ風にするのも女将のお気に入りです
  • 秋 新米と鯛めし。この時期だけの贅沢でございます
  • 冬 鯛しゃぶで、ご家族そろってお鍋を。締めの雑炊に三つ葉を散らして

11. まとめ

この記事のポイント

  • 「旬」の字はもともと十日間の意味。あっという間に過ぎるもの、という感覚が込められています
  • 日本料理では旬を走り・盛り・名残の三つに分けます。「盛り」だけを良しとしないのが面白いところ
  • 初物を尊ぶ文化も。江戸っ子は味より「いちばん早い」ことに価値を見出しました
  • 春は桜鯛・鰆・イカナゴ、夏は鱧・鮎・タコ、秋は紅葉鯛・秋刀魚・戻り鰹、冬は鰤・鱈・牡蠣
  • 鯛には一年に二度の旬。春の桜鯛は姿の美しさ、秋の紅葉鯛は味の深さ
  • 産卵直後の麦わら鯛という名まであるのが、日本人の観察眼のすごさです
  • 一年中手に入る時代だからこそ、旬は「季節を感じる物差し」としての価値が増しています
  • 工夫は薬味を変える・器を替える・安いものを見る・一品だけ季節のものを・口に出す

旬のものを食べるというのは、季節と一緒に生きるということなのだと思います。

いつでも何でも手に入る時代に、あえて「今はこれが美味しい時期だね」と言ってみる。それだけで、一年が少し立体的になります。

春は桜鯛、秋は紅葉鯛。今度スーパーや食卓で鯛を見かけたら、「今はどの鯛かな」と思ってみてくださいませ。きっと少し、楽しくなりますよ🐟😊

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