取引先へのお中元・お歳暮、社内規定と判断のポイントを解説
こんにちは、明石めで鯛やの女将です🐟
「お取引先へのお中元、今年はどうしたらよいでしょうか」——このご相談が、ここ数年で明らかに増えました。
背景には、企業のコンプライアンス意識の高まりがございます。「虚礼廃止のお知らせ」が届くようになり、ご贈答の受け取りを辞退される企業さまも増えました。贈る側としては「贈るべきか、やめるべきか」の判断そのものが難しくなっているのですね。
この記事では、社内規定の整え方、相手先の確認のしかた、そして「贈らない」という判断をどう伝えるかまで、実務の目線でまとめました。贈り物を扱う私どもが申し上げるのも妙ですが、やめるという選択も立派な判断です。そのうえで、続ける場合に何を押さえればよいのかをお話しいたします😊
1. なぜ今、判断が難しくなっているのでしょう
かつては「お取引先にはお中元とお歳暮を贈るもの」という共通の前提がございました。悩む余地があまりなかったのですね。
それが近年、三つの流れで変わってまいりました。
① コンプライアンス意識の高まり
ご贈答が「利益供与」と見られることを避けるため、受け取りを禁止あるいは金額の上限を定める企業が増えました。特に上場企業、金融機関、医療・公共に関わる分野では厳しく定められていることが多いです。
② 虚礼廃止の流れ
「形式だけのご贈答はお互いに負担になる」という考え方から、社内規定でご贈答をやめる企業が増えました。年末に「虚礼廃止のお知らせ」が届くようになったのは、この流れです。
③ 働き方の変化
在宅勤務が広がり、オフィスに届いたお品を誰が受け取り、誰に渡すのかという実務上の問題も出てまいりました。ご担当者さまが出社されていないことも珍しくありません。
つまり今は、「贈るのが当たり前」でも「贈らないのが当たり前」でもないという、いちばん判断が難しい時期なのです。だからこそ、自社の方針をはっきり決めておくことに意味がございます。
2. 絶対に贈ってはいけない相手
判断の前に、例外なく避けるべき相手をはっきりさせておきます。
公務員の方へのご贈答は控えるものです
- 国家公務員・地方公務員 法令や倫理規程により、利害関係者からの贈与を受けることが禁じられています
- みなし公務員 独立行政法人、国立大学法人、公社・公団などの職員の方々も、各機関の規程により同様に扱われることが多いです
- 公立学校・公立病院の職員の方 お立場によって公務員にあたります
※お品を受け取った側が規程違反を問われることになります。贈る側に悪意がなくても、相手を困らせてしまいます。
「少額だから」「お世話になったお礼だから」という理由は通りません。お取引先のリストを作る段階で、公務員・みなし公務員にあたる先を除いておくのが確実です。
なお、民間企業でも金融機関、医療機関、報道機関などは独自の厳しい規程を持っておられることが多いです。こうした分野のお取引先には、必ず事前確認をなさってください。
3. 立場の違いに気をつけたい場面
もうひとつ、見落とされがちな点がございます。自社が発注側か受注側かという立場の違いです。
受注側(お仕事をいただく立場)から発注側へお贈りするのは、昔からよくある形です。けれど近年は、この形そのものに慎重な企業が増えております。発注側が立場を利用してご贈答を受ける、あるいは期待する——これは取引の公正さを損なうおそれがあるとされ、法令上も問題となり得るからです。
立場に関わる注意点
- 発注側の企業が、受注側からのご贈答を受け取らない方針を定めていることが増えています
- 受注側が「贈らないと不利になるのでは」と感じるような状況は、発注側として作ってはいけません
- 自社が発注側の場合、取引先からのご贈答を受け取るかどうかの方針を、社内ではっきり定めておくことが大事です
※当店は法律の専門家ではございません。判断に迷われる場合は、自社の法務ご担当者さまや弁護士さんにご確認くださいませ。この記事は一般的な考え方をご紹介するものです。
4. 自社の社内規定を整えるときの5つの観点
「毎年なんとなく続けている」という状態がいちばん危ないところです。一度、自社の方針として書き出しておくと、ご担当者さまが替わっても判断がぶれません。
① 誰に贈るかの基準
感覚で決めると、毎年リストが膨らんでいきます。取引額、お付き合いの年数、窓口の有無など、基準を言葉にしておきましょう。「年間取引額○○円以上の先」というように決めておくと、増やすときも減らすときも説明ができます。
② 金額の上限
お取引先のランクごとに上限を決めておきます。相手先の規定で「○○円以上は受け取れない」という定めがあることも多いので、高すぎないことが大事です。
③ 贈らない先のリスト
公務員・みなし公務員の先、辞退のお申し出があった先、受け取りを禁止されている先。「贈らない」と決めた先も記録に残すのがポイントです。これがないと、担当者が替わったときに再び贈ってしまいます。
④ 決裁のながれ
誰が決めて、誰が承認するか。金額がいくら以上なら上の承認が必要か。ここを決めておけば、毎年の手続きが早く回ります。
⑤ 記録の残し方
どの先に、いくらのお品を、いつお届けしたか。のしの表書き、差出人名。この記録が翌年の判断材料になります。前年と同程度にするのが基本ですので、記録がないと毎年ゼロから悩むことになります。
5. 相手先の規定をどう確認するか
いちばん確実なのは、お尋ねすることです。「聞きにくい」とお思いになるかもしれませんが、実は聞かれた側も楽なのです。お品が届いてから辞退のご連絡を差し上げるほうが、ご先方にとってはずっと気が重いことですから。
お尋ねするときの言い方の例
「毎年、季節のご挨拶をさせていただいておりますが、近年ご贈答に関する社内規定を設けておられる企業さまも多いとうかがっております。貴社のご方針はいかがでございましょうか。差し支えなければお教えいただけますと幸いです。」
※「規定があればやめます」という姿勢を先に示すのが大事です。これがあると、相手も遠慮なくお答えいただけます。
確認しておきたい三つのこと
- ① 受け取り自体が可能か 禁止されていないか
- ② 金額の上限があるか 上限を超えると、ご先方が社内手続きで困られます
- ③ お届け先はどこがよいか ご担当者さま個人宛か、総務部宛か、会社宛か。在宅勤務の方が多い企業さまでは、ここが大事になります
一度うかがっておけば、以後ずっと使える情報になります。リストに書き添えておきましょう。
6. 「虚礼廃止のお知らせ」が届いたときの対応
年末が近づくと、「本年より、ご贈答につきましては辞退させていただきます」というご案内が届くことがございます。
このときの対応は、はっきりしています。素直に従うのが唯一の正解です。
虚礼廃止のお知らせが届いたら
- その年から、その先へのご贈答をやめる 「気持ちだから」と贈るのは、ご先方の方針を軽んじることになります
- リストに記録を残す 「○年より辞退のお申し出あり」と書き添えて、翌年以降も間違えないように
- 代わりにご挨拶状を送る お品はやめても、ご挨拶は続けられます。むしろここで丁寧なご挨拶状を送られると、印象に残ります
- 社内で共有する 営業のご担当者さまが個別に贈ってしまわないように、情報を回しておきましょう
辞退のお申し出をいただいたことは、関係が悪くなったという意味ではまったくございません。お互いの負担をなくそうというご提案です。素直に受け取って、関係は変わらず続けていけばよいのです。
7. 受け取りを辞退された・返送されたときは
お届けしたお品が返送されてくる、あるいは「お受け取りできません」とご連絡をいただくこともございます。
そのときの対応
- ① まずお詫びを 「お手数をおかけしました」と、ご連絡いただいたことへのお礼とお詫びを。ご先方は気を使ってご連絡くださっています
- ② 事情をうかがう 社内規定なのか、金額の問題なのか。次の判断材料になります
- ③ 以後は贈らないと明言する 「以後は差し控えさせていただきます」とお伝えすると、ご先方も安心されます
- ④ リストと記録を更新する これが抜けると、翌年また同じことが起きます
- ⑤ 社内に共有する 他の部署から重ねて贈ってしまわないように
なお、返送されてきたお品の扱いについては、商品の種類と状態によって異なります。冷蔵・冷凍品の場合、返送の過程で品質が保てないことがございますので、当店では必ずご相談をお願いしております。
8. こちらから「やめる」と伝えるときの作法
自社の方針としてご贈答をやめると決められた場合、その旨をお伝えするのが丁寧です。何も言わずに途中でやめてしまうと、ご先方が「何かあったのか」と気にされます。
お伝えするときのポイント
- 時期は早めに お中元をやめるなら6月のうちに、お歳暮をやめるなら11月のうちに。ご先方がお返しを用意される前にお知らせするのが礼儀です
- 理由は「社内方針」で十分 細かくご説明する必要はありません
- 関係は変わらないと添える ここがいちばん大事です。「今後も変わらぬお付き合いをお願い申し上げます」の一言を忘れずに
- お品はやめても、ご挨拶は続ける 「ご挨拶状にてご挨拶させていただきます」と添えると、気持ちが伝わります
文面の例
「平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、弊社では本年より社内方針の見直しに伴い、季節のご挨拶の品につきましては差し控えさせていただくことといたしました。
長年にわたりお受け取りいただきましたご厚意に、心より御礼申し上げます。
今後はご挨拶状をもちましてご挨拶させていただきたく存じます。変わらぬお付き合いを賜りますよう、お願い申し上げます。」
9. 贈らない代わりに、できること
贈り物を扱う立場で申し上げますが、ご贈答をやめることは、お付き合いをやめることではございません。
お品の代わりにできることは、たくさんございます。
お品以外で気持ちを伝える方法
- ご挨拶状・季節のお便り 印刷の文面に一行だけ手書きを添えると、ぐっと印象が変わります
- お礼のメールを、その場できちんと 日々のやりとりの中での一言のほうが、年に二度のお品より効くこともあります
- 年始のご挨拶に伺う お顔を見せることは、何よりのご挨拶です
- お役に立つ情報をお届けする ご先方のお仕事に役立つ資料や事例を共有する。これはお品よりも喜ばれることがあります
そして、もし贈れる相手がいらっしゃるなら、そちらに丁寧に贈ることです。数を減らして、一件ずつ心を込める。これが今の時代のご贈答のかたちだと、私は思っております。
10. 続けると決めた場合の実務
確認を済ませて「この先には贈る」と決まったら、あとは段取りです。
お中元・お歳暮の時期と逆算
- お中元 関東は7月初旬〜15日ごろ、関西などは7月中旬〜8月15日ごろ。全国にお取引先があるなら、いちばん早い関東に合わせると失礼がありません。準備は6月から
- お歳暮 12月初旬〜20日ごろ。配送が混み合いますので、準備は11月上旬までに
- 表書きは「御中元」「御歳暮」、水引は紅白の蝶結び
- 時期を過ぎたら「暑中御見舞」「残暑御見舞」「御年賀」「寒中御見舞」に表書きを変えます
価格的によく出ているのは、この二つです
カードギフト
お品物ではなくカードをお届けするかたちです。受け取った方がご自身でお好きなお品を選んでご注文いただけます。ご先方のお好みやご家族構成が分からないときにも安心で、かさばらないのでご訪問の際に手渡しもできます。
鯛の食べ比べセット
鯛のかぶと煮・鯛めし・鯛の昆布〆が入った、ある意味「鯛のフルコース」が楽しめるセットです。一箱で三種類の鯛料理が楽しめますので、季節のご挨拶にふさわしい華やかさがございます。
ご住所をうかがえない、あるいは個人情報をお預かりしたくない場合はeギフトというかたちもございます。URLをメールでお送りすると、受け取った方ご自身がお届け先とご希望の日時をご入力いただける仕組みです。在宅勤務のご担当者さまへお贈りする場合にも重宝します。
大口注文はエクセルシートで一括手配できます
- ① 当店へご連絡いただき、大口注文用のエクセルシートをお受け取りいただく
- ② お送り先・お届け希望日・ご希望のお品・のしの表書きなどをご記入いただく
- ③ シートをご返送いただく
- ④ あとはこちらですべて手配いたします
※のしの表書き・差出人名・添え状の同封など、細かなご希望も遠慮なくお申し付けくださいませ。企業さまごとにヒアリングして、配送方法までカスタマイズいたします。
お取引先リストをすでにエクセルで管理されていれば、そのデータを貼り付けていただくだけで済むことも多いです。ご担当者さまにしていただくのは、シートにご記入いただくことだけ。発送の手続きやお届け日の調整は、すべて当店が引き受けます。
11. まとめ
この記事のポイント
- 今は「贈るのが当たり前」でも「贈らないのが当たり前」でもない時期。自社の方針を決めておくことに意味があります
- 公務員・みなし公務員の方へのご贈答は控えるもの。リストを作る段階で除いておく
- 自社が発注側か受注側かという立場の違いにも注意。判断に迷えば法務ご担当者さまへ
- 社内規定に入れるのは①誰に贈るかの基準 ②金額の上限 ③贈らない先のリスト ④決裁のながれ ⑤記録の残し方
- 相手先の規定はお尋ねするのがいちばん確実。「規定があればやめます」という姿勢を先に示す
- 虚礼廃止のお知らせが届いたら、素直に従うのが唯一の正解。記録を残し、社内で共有する
- 辞退・返送されたら、お詫びと「以後差し控えます」のお伝えを。リストも必ず更新
- こちらからやめるなら、時期は早めに、理由は社内方針で十分、関係は変わらないと添える
- お品をやめても、ご挨拶状・お礼のメール・ご訪問で気持ちは伝わります
- 続ける先には丁寧に。数を減らして、一件ずつ心を込めるのが今のかたち
贈り物を扱う私どもが「やめるのもひとつの判断です」と申し上げるのは、妙に聞こえるかもしれません。
けれど、ご先方に気を使わせてしまうご贈答や、規定に反してご担当者さまを困らせてしまうご贈答に、何の意味もないのです。贈り物は、相手が気持ちよく受け取れてはじめて贈り物になるのだと思っております。
だからこそ、贈れる相手には丁寧に。縁起のよい鯛を添えて、お付き合いへの感謝をお伝えいただけたら嬉しく思います🐟😊
ご予算と件数、お届けのご希望をお聞かせいただければ、ご提案からお手配まで一緒に考えさせていただきます。法人ギフトは明石めで鯛やの得意分野です。










女将のひとこと
法人ギフトのご担当者さまから、「前任者が何を贈ったのか分からなくて困っています」というお話をうかがうことがよくあります。
ご贈答は、金額を前年より下げると「関係が薄まったのか」と受け取られ、急に上げると「何かお願いがあるのか」と思われる。だから記録がないことは、そのまま判断の難しさにつながるのですね。
手配が終わったら、その年のことを一枚にまとめて残しておく。これが来年のご自身へのいちばんの贈り物だと思います🐟